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まるなげ ブログ AS400脱却のベストタイミングは?基幹システム刷新で失敗しない3つの判断軸
AS400脱却のベストタイミングは?基幹システム刷新で失敗しない3つの判断軸

AS400脱却のベストタイミングは?基幹システム刷新で失敗しない3つの判断軸

多くの企業が直面している基幹システムの老朽化問題。特にAS400をはじめとするレガシーシステムは、保守費用の増大や機能拡張の困難さから、経営の足かせになっているケースが少なくありません。しかし、基幹システムの刷新は企業にとって大きな投資となるため、そのタイミングの見極めが重要です。

「いつ刷新すべきか」「どのような状態になったら移行を検討すべきか」といった疑問に対して、明確な判断基準を持つことは、システム投資の成功に直結します。実際、タイミングを誤ったために移行プロジェクトが失敗したり、想定以上のコストがかかったりする事例も存在します。

そこで本記事では、AS400をはじめとする基幹システムの刷新タイミングを見極めるための3つの判断軸について詳しく解説します。システムの寿命や保守費用、業務への影響度など、具体的な指標を用いて最適なタイミングを判断する方法をお伝えします。

基幹システムの寿命と刷新タイミングの基本的な考え方

基幹システムの刷新を検討する際、まず理解しておくべきは「システムの寿命」という概念です。一般的に基幹システムの寿命は10~15年程度といわれていますが、これはあくまで目安であり、実際の刷新タイミングは企業の状況によって大きく異なります。

物理的寿命と論理的寿命の違い

基幹システムの寿命には、「物理的寿命」と「論理的寿命」の2つの側面があります。

物理的寿命とは、ハードウェアが故障したり、メーカーのサポートが終了したりすることで、システムが物理的に使用できなくなる期限を指します。一方、論理的寿命とは、ビジネス要件の変化に対応できなくなったり、運用コストが著しく増大したりすることで、実質的にシステムの価値が失われる時点を意味します。

AS400のような堅牢なシステムは物理的寿命が長い傾向にありますが、論理的寿命の観点から見ると、ビジネススピードの加速により早期の刷新が必要になるケースが増えています。

レガシーシステムが抱える構造的な問題

AS400をはじめとするレガシーシステムには、以下のような構造的な問題が存在します。

第一に、技術者の高齢化と人材不足です。AS400に精通した技術者は年々減少しており、保守や改修の際に適切な人材を確保することが困難になっています。これにより、システムの属人化が進み、特定の担当者に依存する運用体制となっているケースが多く見られます。

第二に、最新技術との連携の困難さです。クラウドサービスやAI、IoTといった最新技術との統合が難しく、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進において大きな障害となっています。

第三に、データの分断です。部門ごとに独立したシステムが構築されているケースでは、在庫、受発注、与信などの重要な業務データがつながらず、経営判断に必要な統合的な情報を得ることができません。

判断軸1:保守・運用コストの増大と投資対効果

基幹システム刷新の最も重要な判断軸の一つが、保守・運用コストの観点です。レガシーシステムは年を経るごとに保守費用が増大する傾向にあり、ある時点で新システムへの投資の方が経済的に合理的になります。

保守コストが増大する要因

AS400などのレガシーシステムで保守コストが増大する主な要因として、以下が挙げられます。

まず、ハードウェアの保守契約費用の上昇です。製造終了から年数が経過したハードウェアは、部品調達が困難になり、保守契約費用が年々上昇します。メーカーによっては、延長サポートに高額な費用を請求するケースもあります。

次に、改修費用の増大です。古いプログラミング言語で構築されたシステムは、改修の際に多大な工数がかかります。また、ドキュメントの不備や属人化により、簡単な機能追加でも多額の費用が発生することがあります。

さらに、機会損失も考慮する必要があります。レガシーシステムの制約により、新しいビジネスモデルへの対応や業務効率化の機会を逃すことは、直接的なコストには現れませんが、企業の競争力を大きく損なう要因となります。

投資対効果を計算する際のポイント

システム刷新の投資対効果を検討する際は、単純な費用比較だけでなく、以下の観点から総合的に判断することが重要です。

初期投資については、ハードウェア、ソフトウェアライセンス、導入作業費、データ移行費用、教育費用などを含めた総額を把握します。一般的に、中堅企業の基幹システム刷新には数千万円から数億円の投資が必要となります。

運用コストの削減効果については、保守費用の削減だけでなく、業務効率化による人件費削減、在庫削減効果、機会損失の回避なども含めて算出します。多くの場合、3~5年程度で投資を回収できるケースが理想的とされています。

判断軸2:業務への影響度と改善要求の高まり

基幹システムの刷新タイミングを見極める2つ目の重要な判断軸は、現行システムが業務に与える影響度です。システムの制約により業務効率が著しく低下している場合や、現場からの改善要求が増加している場合は、刷新を検討すべきタイミングといえます。

業務効率低下の典型的なサイン

AS400などのレガシーシステムを使用している企業で見られる、業務効率低下の典型的なサインには以下のようなものがあります。

データの二重入力や転記作業の発生は、最も分かりやすい非効率の例です。部門間でシステムが連携していないため、同じデータを複数のシステムに入力する必要があり、入力ミスのリスクも高まります。

リアルタイムでの情報共有ができないことも大きな問題です。在庫情報や受注状況が即座に確認できず、月次処理を待たなければ正確な数値が把握できない状況では、迅速な経営判断が困難になります。

Excel依存の業務プロセスも、システムの限界を示すサインです。システムで対応できない業務をExcelで補完している場合、データの整合性や管理の問題が生じやすくなります。特に与信管理や価格管理などの重要な業務がExcel依存となっている場合は、早急な対応が必要です。

現場からの改善要求を評価する方法

現場からの改善要求は、システム刷新の必要性を判断する重要な指標となります。以下のような観点から、改善要求を体系的に評価することが重要です。

要求の頻度と内容を分析することで、システムの問題点が明確になります。同じような要求が繰り返し発生している場合や、複数の部門から類似の要求が出ている場合は、システムの構造的な問題を示している可能性が高いです。

業務への影響度を定量的に評価することも必要です。例えば、システムの制約により発生している作業時間や、ミスによる損失額を具体的に算出することで、改善の優先順位を明確にできます。

判断軸3:技術的リスクと事業継続性

3つ目の判断軸は、技術的なリスクと事業継続性の観点です。レガシーシステムを使い続けることによる技術的なリスクが高まっている場合、早急な刷新が必要となります。

サポート終了とセキュリティリスク

メーカーのサポート終了は、システム刷新を検討する最も明確なタイミングの一つです。サポートが終了すると、セキュリティパッチの提供が停止し、新たな脆弱性が発見されても対応できなくなります。

特に基幹システムは企業の重要なデータを扱うため、セキュリティリスクは事業継続に直結します。サイバー攻撃の手法は日々進化しており、古いシステムは格好の標的となる可能性があります。

また、ハードウェアの故障リスクも考慮する必要があります。予備部品の調達が困難になると、故障時の復旧に長時間を要し、業務が停止するリスクが高まります。

人材リスクと知識の継承問題

AS400などのレガシーシステムでは、技術者の高齢化と後継者不足が深刻な問題となっています。システムに精通した担当者が退職すると、保守や改修が困難になるケースが多く見られます。

知識の継承を計画的に行うことが理想的ですが、若手技術者にとって古い技術の習得はキャリア形成の観点から魅力的でない場合が多く、継承が進まない現実があります。このような状況では、属人化リスクを回避するためにも、早期のシステム刷新が必要となります。

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AS400から次世代システムへの移行で考慮すべきポイント

AS400からの移行を決断した後は、次世代システムの選定と移行計画の策定が重要になります。特に卸売・商社業界では、業界特有の要件を満たすシステム選定が成功の鍵となります。

卸売・商社業界特有の要件

卸売・商社業界の基幹システムには、他業種とは異なる特有の要件があります。これらの要件を満たすシステムを選定することが、移行後の業務効率化につながります。

取引先別の単価管理は、卸売業の基本的な要件です。同じ商品でも取引先によって異なる価格設定を行うため、柔軟な価格管理機能が必要となります。また、ボリュームディスカウントや期間限定価格など、複雑な価格体系に対応できることも重要です。

EDI(電子データ交換)への対応も欠かせません。大手取引先とのデータ連携はEDIで行われることが多く、各社の仕様に対応できる柔軟性が求められます。

多通貨・複税率への対応も、グローバル化が進む現代では必須の機能となっています。輸出入業務を行う企業では、為替変動への対応や、国ごとに異なる税制への対応が必要です。

段階的移行vs一括移行の選択

システム移行の方法には、段階的移行と一括移行の2つのアプローチがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、企業の状況に応じて適切な方法を選択することが重要です。

段階的移行は、リスクを最小限に抑えながら移行を進められる利点があります。まず特定の部門や機能から移行を開始し、問題がないことを確認してから次の段階に進むため、大きな失敗を避けることができます。一方で、新旧システムの並行運用期間が長くなり、データ連携の複雑性が増すというデメリットもあります。

一括移行は、短期間で移行を完了できるため、並行運用の複雑性を避けられます。しかし、移行時のリスクが高く、問題が発生した場合の影響範囲が大きくなる可能性があります。十分な準備期間と綿密な移行計画が必要となります。

失敗しない基幹システム刷新のための準備と計画

基幹システムの刷新を成功させるためには、適切な準備と計画が不可欠です。多くの失敗事例を分析すると、準備不足や計画の甘さが原因となっているケースが大半を占めています。

プロジェクト体制の構築

成功するプロジェクトに共通しているのは、適切な体制構築です。経営層のコミットメントを得て、各部門から適切なメンバーを選出し、専任のプロジェクトチームを組成することが重要です。

プロジェクトマネージャーには、IT知識だけでなく、業務知識と調整能力を持つ人材を任命します。また、各部門のキーパーソンを巻き込むことで、現場の要求を適切に反映し、導入後の定着を促進できます。

外部ベンダーとの協力体制も重要です。特にSAPなどの大規模なERPパッケージを導入する場合は、経験豊富なベンダーを選定し、密接な連携を取ることが成功の鍵となります。

現行業務の可視化と改善

システム刷新は、単なるシステムの置き換えではなく、業務プロセスを見直す絶好の機会でもあります。現行業務を詳細に分析し、非効率な部分を改善することで、新システムの効果を最大化できます。

業務フローの文書化は、現状把握の第一歩です。各部門の業務プロセスを詳細に記録し、システムとの関連を明確にします。この過程で、重複作業や非効率なプロセスが発見されることも多くあります。

改善ポイントの特定では、「なぜこの作業が必要なのか」という本質的な問いかけが重要です。慣習的に行われている作業の中には、システム化により不要になるものも含まれているかもしれません。

まとめ:最適なタイミングでの決断が企業の未来を左右する

基幹システムの刷新タイミングは、企業の将来を左右する重要な経営判断です。本記事で解説した3つの判断軸を総合的に評価することで、最適なタイミングを見極めることができます。

保守・運用コストの観点では、現行システムの維持費用と新システムへの投資を比較し、投資対効果を慎重に検討します。一般的に、保守費用が年々増加し、3~5年での投資回収が見込める場合は、刷新を検討すべきタイミングといえます。

業務への影響度の観点では、現場からの改善要求や業務効率の低下を定量的に評価します。特に、データの分断により経営判断が遅れている場合や、Excel依存による業務リスクが高まっている場合は、早急な対応が必要です。

技術的リスクと事業継続性の観点では、サポート終了やセキュリティリスク、人材リスクを総合的に判断します。これらのリスクが顕在化する前に、計画的な移行を進めることが重要です。

AS400をはじめとするレガシーシステムからの脱却は、確かに大きな決断です。しかし、適切なタイミングで刷新を行うことで、企業の競争力を大きく向上させることができます。デジタル時代における企業の成長には、基盤となるシステムの近代化が不可欠です。

今こそ、自社のシステムを客観的に評価し、次の10年を見据えた基幹システムの在り方を検討する時期かもしれません。レガシーシステムに縛られ続ける一年と、新たなシステムで成長を加速する一年。その差は、時間とともに大きく広がっていくことでしょう。

詳しい資料は以下よりご確認いただけます。

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