中国EC日本企業の始め方｜国内発送だけで最短参入する新手法

中国のEC市場は、世界最大規模を誇り、日本企業にとって魅力的な販路となっています。しかし、多くの企業が「どこから始めれば良いのか」「リスクが高そう」「手続きが複雑」といった不安を抱えているのが現状です。

従来の越境ECでは、商品の海外発送、複雑な通関手続き、現地での在庫管理など、多くのハードルが存在していました。これらの課題により、中国市場への参入を諦めてしまう企業も少なくありません。

そこで本記事では、国内発送だけで中国EC市場に参入できる新しい手法について詳しく解説します。この方法なら、海外発送の手間やリスクを回避しながら、最短で中国の消費者にアプローチすることが可能です。

中国EC市場の現状と日本企業のチャンス

中国のEC市場は、近年急速な成長を続けており、日本企業にとって大きなビジネスチャンスとなっています。ここでは、市場の現状と日本企業が参入すべき理由について解説します。

中国EC市場の規模と成長性

中国のEC市場は世界最大規模であり、その市場規模は年々拡大しています。経済産業省の報告によると、中国のEC化率は他国と比較しても非常に高い水準にあります。

特に注目すべきは、中国消費者の日本製品に対する信頼性の高さです。「メイドインジャパン」ブランドは、品質の高さと安全性の象徴として認識されており、多くの中国消費者が日本製品を求めています。

日本企業が中国EC市場に参入すべき理由

日本企業が中国EC市場に参入すべき理由は複数あります。まず、国内市場の成熟化により、新たな成長機会を海外に求める必要性が高まっています。また、中国消費者の購買力向上により、高品質な日本製品への需要が増加しています。

さらに、デジタル技術の発展により、以前と比べて参入障壁が大幅に低下しています。特に、後述する免税ECモデルの登場により、従来の複雑な手続きを回避できるようになったことは大きな変化です。

従来の中国EC参入方法とその課題

これまで日本企業が中国EC市場に参入する際には、いくつかの方法がありました。しかし、それぞれに大きな課題が存在していたのも事実です。

一般貿易による越境EC

一般貿易による越境ECは、最も伝統的な参入方法です。この方法では、商品を中国に輸出し、現地の倉庫で保管・配送を行います。しかし、この方法には以下のような課題があります。

まず、複雑な通関手続きが必要となります。中国の輸入規制は厳しく、商品によっては認証取得に長期間を要することもあります。また、現地での在庫管理や物流体制の構築には、多額の初期投資が必要です。

さらに、売上代金の回収リスクも無視できません。現地パートナーとの取引では、代金回収の遅延や未回収といったトラブルが発生する可能性があります。

保税区活用モデル

保税区活用モデルは、中国の保税区に商品を保管し、注文に応じて配送する方法です。一般貿易と比べて通関手続きが簡略化されるメリットがありますが、依然として以下の課題が残ります。

保税区への商品輸送には時間とコストがかかります。また、在庫リスクも抱えることになり、売れ残った商品の処理に困ることもあります。さらに、保税区の利用には一定の条件があり、すべての商品が対象となるわけではありません。

現地法人設立による直接販売

現地法人を設立して直接販売する方法は、最も本格的な参入方法ですが、同時に最もハードルが高い方法でもあります。現地法人の設立には多額の資本金が必要であり、現地スタッフの採用や管理体制の構築など、多くの課題があります。

また、中国のビジネス環境は日本とは大きく異なるため、現地の商習慣や規制への対応に苦労する企業も少なくありません。特に中小企業にとっては、リスクが高すぎる選択肢と言えるでしょう。

新手法：免税ECモデルの仕組みと特徴

ここまで見てきた従来の方法の課題を解決する新しい手法が、免税ECモデルです。このモデルは、日本国内で商品を納品するだけで、中国消費者への販売が可能になる画期的な仕組みです。

免税ECモデルとは何か

免税ECモデルは、中国の大手ECプラットフォームが提供する日本免税許可ECを活用した販売方法です。このモデルでは、日本企業は国内の指定倉庫に商品を納品するだけで、中国消費者への販売が可能になります。

具体的には、中国消費者が日本の商品を購入する際、その商品は日本国内から直接配送されます。この際、免税制度を活用することで、消費税が免除されるため、価格競争力も確保できます。

このモデルの最大の特徴は、日本企業が海外発送や通関手続きを一切行う必要がないことです。すべての手続きは、ECプラットフォーム側で対応してくれるため、企業は商品の供給に専念できます。

JD（京東）の日本免税許可ECの活用

免税ECモデルの代表的な例が、中国大手ECプラットフォームであるJD（京東）が提供する日本免税許可ECです。JDは中国で高いシェアを持つECプラットフォームであり、特に品質重視の消費者から支持を得ています。

JDの日本免税許可ECを活用することで、日本企業は中国の購買層に直接リーチできます。JDのプラットフォーム上には多くの中国消費者がアクセスしており、日本製品への関心も高いため、販売機会は豊富にあります。

また、JDは物流インフラも充実しており、注文から配送までをスムーズに行うことができます。これにより、顧客満足度の向上にもつながります。

国内納品で完結する仕組み

免税ECモデルの大きな特徴は、すべての作業が日本国内で完結することです。企業は国内の関連会社や指定倉庫に商品を納品するだけで、あとはプラットフォーム側がすべて対応してくれます。

この仕組みにより、以下のようなメリットが生まれます。まず、海外発送の手間が一切かかりません。梱包や配送ラベルの作成、通関書類の準備など、煩雑な作業から解放されます。

また、在庫管理も国内で行えるため、在庫状況の把握が容易です。必要に応じて迅速に補充することも可能であり、機会損失を防ぐことができます。

免税ECモデルの具体的なメリット

免税ECモデルには、従来の越境ECにはない多くのメリットがあります。ここでは、日本企業にとって特に重要なメリットについて詳しく解説します。

前払い精算による資金繰りの安定

免税ECモデルの大きなメリットの一つが、前払い精算システムです。このシステムでは、商品の仕入代金が前払いで支払われるため、資金繰りの不安を大幅に軽減できます。

従来の越境ECでは、売上代金の回収に時間がかかることが多く、キャッシュフローの悪化に悩む企業も少なくありませんでした。しかし、前払い精算なら、商品を納品した段階で代金を受け取ることができるため、資金繰りが安定します。

特に中小企業にとって、この前払い精算システムは大きな魅力です。運転資金に余裕がない企業でも、安心して中国市場に参入できるようになります。

海外発送・通関手続き不要

海外発送や通関手続きが不要であることも、免税ECモデルの大きなメリットです。これらの手続きは専門知識が必要であり、ミスがあると商品の配送が遅れたり、最悪の場合は返送されたりすることもあります。

免税ECモデルなら、これらの煩雑な手続きをすべて回避できます。企業は国内での商品納品に集中すればよく、海外ビジネスの経験がない企業でも安心して取り組めます。

また、通関トラブルのリスクもなくなります。中国の輸入規制は頻繁に変更されることがありますが、そうした変更への対応もプラットフォーム側で行ってくれるため、企業側の負担は大幅に軽減されます。

初期費用を抑えたスモールスタート

免税ECモデルは、初期費用を抑えてスモールスタートできることも特徴です。従来の越境ECでは、現地での倉庫確保や物流体制の構築に多額の初期投資が必要でしたが、免税ECモデルならそうした投資は不要です。

実際、1商品からでも始めることができるため、まずは市場の反応を見ながら、段階的に商品数を増やしていくことが可能です。この「まず1商品で検証→勝ち筋横展開」というアプローチは、リスクを最小限に抑えながら市場開拓を進める賢明な戦略と言えます。

運用代行による省力化

免税ECモデルでは、商品登録から広告運用、カスタマーサポートまで、一気通貫の運用代行サービスを利用できることも大きなメリットです。これにより、社内リソースが限られている企業でも、中国EC市場への参入が可能になります。

特に、中国のECプラットフォームは日本とは操作方法が異なることが多く、商品登録一つとっても専門知識が必要です。しかし、運用代行サービスを利用すれば、こうした作業をプロに任せることができます。

また、中国語でのカスタマーサポートも代行してもらえるため、言語の壁を心配する必要もありません。これにより、企業は商品開発や品質管理など、本来の業務に集中できます。

免税ECモデルで成功するための戦略

免税ECモデルを活用して中国市場で成功するためには、適切な戦略が必要です。ここでは、実践的な戦略について解説します。

対象商品の選定ポイント

免税ECモデルで販売する商品を選ぶ際は、いくつかのポイントを押さえる必要があります。まず、中国消費者のニーズに合った商品を選ぶことが重要です。一般的に、日本製品の中でも特に人気が高いのは、コスメ、サプリメント、雑貨などです。

また、商品の価格帯も重要な要素です。高すぎず安すぎない、適正な価格設定が求められます。中国消費者は品質を重視する傾向があるため、安さだけを追求するのではなく、品質と価格のバランスを考える必要があります。

さらに、商品の差別化も重要です。中国市場には多くの商品が流通しているため、独自性のある商品でなければ埋もれてしまう可能性があります。日本ならではの技術や品質、デザインなどを活かした商品選定が成功の鍵となります。

段階的な市場拡大アプローチ

免税ECモデルの大きな利点は、段階的に市場を拡大できることです。まずは1商品から始めて、市場の反応を見ながら徐々に商品数を増やしていく。このアプローチにより、リスクを最小限に抑えながら、確実に成長していくことができます。

最初の商品で成功したら、その成功要因を分析し、同じような特徴を持つ商品を追加していきます。この「勝ち筋の横展開」により、効率的に売上を拡大することが可能です。

また、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、商品改良や新商品開発に活かすことも重要です。中国消費者のニーズは日本とは異なることが多いため、現地の声を聞きながら商品戦略を調整していく必要があります。

中国消費者へのアプローチ方法

中国消費者に効果的にアプローチするためには、現地の文化や習慣を理解することが重要です。例えば、中国では口コミやインフルエンサーの影響力が非常に強いため、これらを活用したマーケティングが効果的です。

また、商品説明や広告文は、単に日本語を翻訳するだけでなく、中国消費者に響く内容にする必要があります。日本製品の品質の高さや安全性をアピールしつつ、中国消費者が求める価値を明確に伝えることが重要です。

さらに、中国の商戦期を意識したプロモーション戦略も必要です。特に「独身の日」（11月11日）や「618」（6月18日）などの大型セール期間は、売上を大きく伸ばすチャンスとなります。

免税ECモデル導入の具体的な流れ

実際に免税ECモデルを導入する際の流れについて、具体的に解説します。スムーズな導入のためには、各ステップを確実に進めていくことが重要です。

導入前の準備事項

免税ECモデルの導入前には、いくつかの準備が必要です。まず、自社の商品が対象となるかどうかを確認する必要があります。一般的に、食品以外の小売業、飲料、酒造、コスメ、雑貨、サプリメント、ペット関連のメーカーなどが対象となりますが、詳細は確認が必要です。

次に、社内体制の整備も重要です。担当者を決め、商品の在庫管理や納品スケジュールを管理する体制を整える必要があります。また、売上目標や投資計画なども事前に策定しておくことが望ましいでしょう。

さらに、必要な書類の準備も行います。会社情報や商品情報、各種証明書など、申請に必要な書類は事前に揃えておくとスムーズに進められます。

申請から開始までのステップ

実際の申請から販売開始までは、一般的に以下のようなステップで進みます。まず、サービス提供会社への問い合わせから始まります。この段階で、自社の商品が対象となるか、どのような条件があるかなどを確認します。

次に、正式な申請を行います。必要書類を提出し、審査を受けます。審査期間は業者により異なりますが、この間に商品情報の準備や価格設定などを進めておくと効率的です。

審査が通過したら、商品登録を行います。商品画像や説明文、価格などの情報を登録し、販売準備を整えます。この際、中国消費者向けの商品説明文の作成なども行います。

最後に、初回納品を行い、販売を開始します。販売開始後は、売上動向を確認しながら、在庫補充や商品追加などを行っていきます。

運用開始後の管理ポイント

運用開始後は、継続的な管理が重要です。まず、在庫管理を適切に行う必要があります。品切れは機会損失につながるため、売上動向を見ながら適切なタイミングで補充を行います。

また、顧客からの問い合わせやクレームへの対応も重要です。運用代行サービスを利用している場合でも、重要な問い合わせについては自社で確認し、必要に応じて商品改良などに反映させます。

さらに、売上データの分析も欠かせません。どの商品がよく売れているか、どの時期に売上が伸びるかなどを分析し、今後の戦略に活かしていきます。定期的にレポートを確認し、PDCAサイクルを回していくことが成功への近道です。

よくある質問と回答

免税ECモデルについて、よくいただく質問とその回答をまとめました。導入を検討される際の参考にしてください。

どんな企業が利用できるのか

免税ECモデルは、法人格のある企業が対象となります。個人事業主の場合は、利用できない場合が多いため、事前に確認が必要です。また、業種についても制限があり、一般的に食品小売は対象外となっています。

対象となる業種は、飲料、酒造、コスメ、雑貨、サプリメント、ペット関連のメーカーなどです。ただし、これらの業種であっても、商品によっては対象外となる場合があるため、詳細は個別に確認することをお勧めします。

必要な初期投資額は

免税ECモデルの大きな特徴は、初期投資を抑えられることです。従来の越境ECと比較して、現地法人設立や倉庫確保などの大規模な投資は不要です。

必要な費用は、主にサービス利用料と商品の仕入れ代金です。サービス利用料は提供会社により異なりますが、一般的に売上に応じた手数料形式が多く、初期費用を抑えることができます。詳細な料金体系については、各サービス提供会社に確認が必要です。

また、1商品から始められるため、最初は少額の投資で市場の反応を見ることができます。成功の見込みが立ってから本格的な投資を行うという、リスクを抑えた展開が可能です。

販売までにかかる期間

申請から販売開始までの期間は、準備状況や審査の進捗により異なりますが、「最短実装」を謳うサービスも存在します。必要書類が揃っていれば、比較的短期間で販売を開始することが可能です。

ただし、商品によっては追加の認証や手続きが必要な場合もあるため、余裕を持ったスケジュールを組むことをお勧めします。特に、初めて中国市場に参入する企業の場合は、準備に時間がかかることもあります。

重要なのは、「今期中に立ち上げる」といった具体的な目標を持つことです。明確な期限を設定することで、準備も効率的に進められます。

リスクと対策について

免税ECモデルは従来の越境ECと比べてリスクが低いとはいえ、完全にリスクがないわけではありません。主なリスクとしては、商品が思うように売れない市場リスクがあります。

このリスクに対しては、前述の通り1商品から始めて段階的に拡大するアプローチが有効です。また、前払い精算システムにより、売掛金の回収リスクは回避できます。

その他、為替リスクや規制変更リスクなども考えられますが、これらについてはサービス提供会社のサポートを受けながら対応していくことが重要です。定期的な情報収集と、柔軟な対応が求められます。

まとめ：今すぐ始められる中国EC参入

本記事では、国内発送だけで中国EC市場に参入できる免税ECモデルについて詳しく解説してきました。このモデルは、従来の越境ECが抱えていた多くの課題を解決し、日本企業が低リスクで中国市場に参入できる画期的な手法です。

免税ECモデルの最大の特徴は、すべての作業が日本国内で完結することです。海外発送や通関手続きの煩雑さから解放され、企業は商品の供給に専念できます。また、前払い精算により資金繰りの不安もなく、1商品からのスモールスタートが可能です。

中国EC市場は今後も成長が期待される魅力的な市場です。日本製品への需要も高く、適切な戦略を持って参入すれば、大きな成功を収める可能性があります。免税ECモデルなら、そのチャンスを低リスクで掴むことができます。

もし、中国市場への参入を検討されているなら、まずは詳しい情報を収集することから始めてみてはいかがでしょうか。専門家のアドバイスを受けながら、自社に合った戦略を立てることが成功への第一歩となります。

詳しい資料は以下よりご確認いただけます。