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中小企業の健康経営、予算なしでも始められる「食」からの第一歩
「健康経営を始めたいけれど、予算も人手も足りない」「何から手をつけていいか分からない」と悩んでいませんか。実は、中小企業こそ健康経営に取り組むべき理由があり、限られた予算でも効果的に始める方法があります。
本記事では、中小企業が直面する健康経営の課題を踏まえ、初期投資を抑えて始められる「食」を切り口にした健康経営の第一歩について、実践的なアプローチをご紹介します。
中小企業にとって健康経営が必要不可欠な理由
中小企業における健康経営の重要性は、年々高まっています。経済産業省の健康経営優良法人認定制度への申請企業数を見ると、中小規模法人部門では2021年度に1万2,255件と前年度の7,934件から大幅に増加しました。では、なぜ中小企業にこそ健康経営が必要なのでしょうか。
従業員一人ひとりの影響力が大きい
従業員数が限られた中小企業では、一人の従業員が体調不良で欠勤したり、パフォーマンスが低下したりすると、その影響は企業全体に及びます。大企業のように代替要員を確保することが難しく、残された従業員の負担が増加し、さらなる健康リスクを招く悪循環に陥りやすいのです。
採用競争力の向上が急務
少子高齢化による労働力不足は、特に中小企業にとって深刻な問題です。知名度で大企業に劣る中小企業が優秀な人材を確保するためには、「従業員の健康に配慮する企業」としてのブランディングが重要になっています。健康経営優良法人の認定を受けることで、求職者に対して魅力的な職場環境をアピールできます。
医療費負担の軽減
中小企業では従業員の高齢化が進み、生活習慣病などによる医療費負担が経営を圧迫するケースが増えています。健康経営により従業員の健康状態を改善することで、医療費の削減だけでなく、傷病による休職・離職の防止にもつながります。
中小企業が健康経営で直面する3つの壁
健康経営の必要性は理解していても、実際に取り組もうとすると様々な障壁に直面します。中小企業特有の課題を整理してみましょう。
1. 予算の制約
健康経営の施策には、設備投資やイベント開催など、どうしても費用が発生します。限られた経営資源の中で、直接的な売上につながらない健康投資に予算を割くことは、中小企業にとって大きな決断となります。
2. 人材不足
多くの中小企業では、人事・総務部門の担当者が複数の業務を兼任しています。健康経営の推進に専任の担当者を配置する余裕がなく、施策の企画・実行が後回しになりがちです。また、従業員50人未満の企業では産業医の選任義務もないため、専門的なアドバイスを受ける機会も限られています。
3. ノウハウの不足
「健康経営を始めたくても、何から手をつければいいか分からない」という声は多く聞かれます。大企業のような体系的な健康管理プログラムを構築することは難しく、効果的な施策を見極めることも容易ではありません。
食事改善から始める健康経営の実践ステップ
こうした制約がある中で、中小企業が健康経営を始めるには、どこから着手すべきでしょうか。答えは「食」にあります。食事は従業員の健康に直結し、かつ比較的低コストで始められる施策だからです。
ステップ1:現状把握と健康課題の明確化
まずは従業員の健康状態と食生活の現状を把握しましょう。健康診断の結果から、以下のような項目をチェックします。
- メタボリックシンドローム該当者・予備群の割合
- 血圧・血糖値・脂質異常の有所見者率
- BMI(肥満度)の分布
また、簡単なアンケートで従業員の食生活の実態を調査することも重要です。朝食欠食率、昼食の内容(コンビニ弁当、外食の頻度など)、野菜摂取量などを把握することで、具体的な改善ポイントが見えてきます。
ステップ2:経営層のコミットメントと健康宣言
健康経営を成功させるためには、経営トップの強いコミットメントが不可欠です。社長自らが「従業員の健康は会社の財産」というメッセージを発信し、健康宣言を行うことで、全社的な取り組みとしての位置づけを明確にします。
健康宣言は、加入している保険者(全国健康保険協会など)や自治体が実施する健康宣言事業に参加する形でも構いません。重要なのは、会社として健康経営に取り組む姿勢を内外に示すことです。
ステップ3:食環境の整備
従業員の食生活を改善するためには、職場の食環境を整えることが効果的です。ただし、社員食堂を新設するような大規模な投資は必要ありません。以下のような、低コストで始められる施策から着手しましょう。
オフィス内での食事環境の改善
- 休憩スペースの確保と電子レンジ・冷蔵庫の設置
- 健康的な飲み物(お茶、野菜ジュースなど)の提供
- 社内での弁当持参を推奨する「弁当の日」の設定
外部サービスの活用
- 健康に配慮した仕出し弁当の斡旋
- 近隣の飲食店と連携した健康メニューの開発
- 食事補助制度の導入(健康的な食事への補助金支給)
ステップ4:食育・栄養教育の実施
食環境の整備と並行して、従業員の食に関する知識向上も重要です。外部講師を招いての栄養セミナーや、保健師による個別栄養指導など、従業員が自発的に健康的な食生活を選択できるような教育機会を提供します。
費用を抑えたい場合は、厚生労働省が提供する無料の教材を活用したり、地域の保健所と連携したりすることも可能です。
ステップ5:効果測定と改善
施策を実施したら、必ず効果を測定し、PDCAサイクルを回すことが重要です。以下のような指標で効果を評価しましょう。
- 健康診断結果の改善(有所見者率の低下など)
- 食生活に関するアンケート結果の変化
- 従業員満足度の向上
- 欠勤率・離職率の改善
社員食堂なしで実現する「食」の福利厚生
「社員食堂を作るスペースも予算もない」という中小企業でも、工夫次第で充実した食の福利厚生を提供できます。ここでは、初期投資を抑えながら効果的に食環境を改善する方法をご紹介します。
置き型社食サービスの活用
最近注目されているのが、冷蔵庫や冷凍庫を設置するだけで導入できる「置き型社食」サービスです。初期投資がほとんど不要で、従業員は好きな時間に健康的な食事を選べるため、シフト勤務や夜勤がある職場でも活用できます。
このようなサービスのメリットは以下の通りです。
- 社員食堂のような大規模な設備投資が不要
- 24時間利用可能で、勤務形態を問わない
- メニューが豊富で飽きにくい
- 管理の手間が少ない
地域との連携による食環境改善
オフィス周辺にコンビニや飲食店が少ない場合は、地域の飲食店や弁当業者と連携することも有効です。従業員向けの特別メニューを開発してもらったり、配達サービスを利用したりすることで、健康的な食事の選択肢を増やせます。
補助金・助成金の活用
多くの自治体では、健康経営に取り組む中小企業向けの補助制度を設けています。食環境の改善に使える補助金もありますので、地域の商工会議所や自治体の健康増進課に相談してみましょう。
健康経営優良法人認定を目指すための重要ポイント
食を切り口にした健康経営の取り組みを進めながら、将来的には健康経営優良法人の認定取得を目指すことをお勧めします。認定要件の中でも、食に関連する項目は多く、着実に実践することで認定への道筋が見えてきます。
認定要件における「食」関連項目
健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定要件には、以下のような食に関連する評価項目があります。
- 食生活の改善に向けた取り組み
- 従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討
- 健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくり
食事改善の取り組みは、これらの要件を満たす上で重要な施策となります。
申請に向けた準備
認定申請に向けては、以下の準備を進めましょう。
- 健康宣言の実施(保険者や自治体の健康宣言事業への参加)
- 取り組み内容の記録・データ収集
- 効果測定の指標設定と継続的なモニタリング
- 社内体制の整備(推進担当者の明確化など)
まとめ:今すぐ始められる健康経営の第一歩
中小企業が健康経営を始めるにあたって、「食」からのアプローチは最も現実的で効果的な方法の一つです。社員食堂のような大規模な投資は必要なく、従業員の健康意識を高めながら、着実に成果を上げることができます。
重要なのは、完璧を求めすぎず、できることから始めることです。まずは従業員の健康課題を把握し、食環境の小さな改善から着手してみてはいかがでしょうか。
健康経営は一朝一夕には成果が出ませんが、継続的な取り組みにより、従業員の健康増進、生産性向上、採用競争力の強化など、様々なメリットをもたらします。限られた経営資源の中でも、工夫次第で効果的な健康経営は実現可能です。
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