警備費用削減方法｜高騰する警備費を適正価格に戻す5ステップ

企業経営において、固定費の見直しは永遠の課題です。その中でも、年々増加傾向にある警備費用は、多くの企業にとって頭の痛い問題となっています。特に近年は人件費の高騰により、警備料金も右肩上がりで推移しており、適正な価格での契約が難しくなっているのが現状です。

しかし、実は警備費用には削減の余地が多く残されています。警備品質を落とすことなく、適正価格での契約を実現することは十分に可能なのです。

そこで本記事では、高騰する警備費用を適正価格に戻すための5つのステップを詳しく解説します。警備会社との価格交渉のポイントから、地域密着型サービスの活用方法まで、実践的な削減手法をご紹介します。

なぜ警備費用は高騰しているのか？3つの構造的要因

警備費用の削減方法を理解する前に、まずは警備費用がなぜ高騰しているのか、その背景を正しく理解することが重要です。

1. 人件費の継続的な上昇

警備費用の大部分を占めるのは人件費です。公共工事設計労務単価の改定と業界の人材不足、高齢化が原因となり、警備員の賃金は年々上昇しています。最低賃金の引き上げや、人材確保のための待遇改善も、料金上昇の大きな要因となっています。

2. 警備業界の構造的な問題

警備業界では、大手2社による寡占状態が続いています。セコムと綜合警備保障の2社にて全体の約90％以上を占めており、同2社による独占市場となっています。このような市場構造では、価格競争が起きにくく、結果として利用者側に不利な価格設定になりがちです。

3. 契約の自動更新による価格の硬直化

多くの企業では、一度契約した警備会社との関係を長期間継続する傾向があります。しかし、契約が満了し償却が終わった後も機械警備の月額費用は変わらないことが多いのが実情です。このような契約の自動更新により、本来なら下がるべき費用が高止まりしているケースが多く見られます。

ステップ1：現在の警備費用の内訳を正確に把握する

警備費用を削減する第一歩は、現在支払っている費用の内訳を正確に把握することです。多くの企業では、毎月の請求書を確認するだけで、その内訳まで詳しく理解していないケースが少なくありません。

常駐警備の費用構造を理解する

常駐警備の場合、コストは直接人件費と間接人件費に管理費と警備会社の利益を加えたもので構成されています。具体的には以下のような項目があります。

• 直接人件費：実際に現場で働く警備員の給与
• 間接人件費：管理部門や教育研修にかかる費用
• 管理費：警備会社の事務所運営費など
• 利益：警備会社の利益率（一般的に5～15％程度）

機械警備の費用構造を理解する

機械警備の場合は、より複雑な構造となっています。間接費（監視センターや警備会社拠点）、直接費（警備員や機械機器代）が主な構成要素です。特に注目すべきは以下の点です。

• 機械償却費：警備機器の購入・設置費用の分割払い
• 監視センター費用：24時間体制での監視にかかる費用
• 駆けつけ費用：異常時に警備員が現場に向かう費用
• メンテナンス費用：機器の定期点検や修理費用

費用分析のチェックポイント

現在の契約書や請求書を確認する際は、以下の点に注意してください。

• 契約開始時期と契約期間
• 機械警備の場合、機器の償却期間
• 時間帯別の料金設定（深夜・休日割増など）
• 臨時対応時の追加料金体系
• 契約更新時の価格改定条項

これらの情報を整理することで、削減可能な項目が明確になります。

ステップ2：適正価格の基準を知る - 相場との比較分析

自社の警備費用が適正かどうかを判断するためには、市場相場を理解することが不可欠です。

警備費用の一般的な相場

警備費用の相場は地域や業務内容によって異なりますが、全国平均で約14,000円〜17,000円程度となっています。ただし、これはあくまで平均値であり、実際の料金は以下の要因によって大きく変動します。

• 地域性（都市部は高く、地方は比較的安い傾向）
• 警備の種類（施設警備、交通誘導、イベント警備など）
• 時間帯（日中、夜間、深夜、休日など）
• 必要なスキルレベル（特殊な資格や経験の有無）
• 契約期間（長期契約ほど単価が下がる傾向）

大手と地域密着型の価格差

警備会社の規模によっても価格は大きく異なります。一般的に、大手警備会社は全国展開のためのインフラコストが料金に反映されるため、地域密着型の警備会社と比較して割高になる傾向があります。

実際に、地域密着型の警備会社では、大手の1/3～1/2程度の価格でサービスを提供しているケースもあります。これは、以下のような理由によるものです。

• 管理コストの削減（本社機能のスリム化）
• 地域に根ざした効率的な人員配置
• 広告宣伝費などの間接費用の削減
• 地域特性に合わせた柔軟な料金設定

適正価格を判断する指標

自社の警備費用が適正かどうかを判断する際は、以下の指標を参考にしてください：

• 同業他社の警備費用（可能な範囲で情報収集）
• 施設規模に対する警備員数の妥当性
• 警備品質と価格のバランス
• 契約年数と価格の関係（長期契約による割引の有無）

これらの指標を総合的に判断することで、自社の警備費用が市場相場と比較して適正かどうかを客観的に評価できます。

ステップ3：複数社から見積もりを取得する - 比較検討の重要性

警備費用の削減において最も効果的な方法の一つが、複数の警備会社から見積もりを取得し、比較検討することです。

相見積もりの効果

これまで相見積等を実施したことがなければ、その背景を踏まえても安価な見積を取得できる可能性があります。特に長年同じ警備会社と契約を続けている場合、市場価格との乖離が大きくなっている可能性が高いです。

相見積もりを取得することで得られるメリットは以下の通りです。

• 市場の適正価格を把握できる
• 各社のサービス内容の違いが明確になる
• 現在の契約条件の妥当性を検証できる
• 価格交渉の材料として活用できる

見積もり依頼時の注意点

効果的な相見積もりを取得するためには、以下の点に注意が必要です。

1. 条件の統一
すべての警備会社に対して、同じ条件で見積もりを依頼することが重要です。警備時間、人員配置、業務内容などを明確に伝え、公平な比較ができるようにしましょう。

2. セキュリティへの配慮
複数社に見積を依頼するということは自社のセキュリティを外部に晒すということでもあります。必要最小限の情報開示に留め、段階的に詳細情報を提供する方法を検討しましょう。

3. 隠れたコストの確認
見積もり金額だけでなく、以下のような隠れたコストがないか確認することが重要です。

• 初期導入費用（機械警備の場合）
• 契約解除時の違約金
• 臨時対応時の追加料金
• 定期的な値上げ条項

地域密着型警備会社の活用

見積もり取得の際は、大手警備会社だけでなく、地域密着型の警備会社も検討対象に含めることをお勧めします。地域密着型の警備会社には以下のような強みがあります。

• 地域特性を理解した効率的な警備体制
• 柔軟な対応と迅速な意思決定
• コストパフォーマンスの高さ
• きめ細かなサービスの提供

特に、地元で長年実績を積んでいる警備会社は、信頼性も高く、大手に劣らないサービス品質を提供していることが多いです。

ステップ4：契約内容の最適化 - 無駄を省いて効率化

見積もり比較を通じて適正価格を把握したら、次は契約内容自体を見直し、最適化することが重要です。

警備体制の見直しポイント

多くの企業では、過剰な警備体制になっているケースが見受けられます。以下の観点から、現在の警備体制を見直してみましょう。

1. 時間帯別の必要性精査
すべての時間帯で同じ警備体制が必要とは限りません。例えば：

• 深夜帯の人員を削減し、機械警備で補完
• 休日の警備体制を最小限に抑える
• 繁忙時間帯のみ増員する柔軟な体制

2. 警備エリアの優先順位付け
施設内のすべてのエリアが同じレベルの警備を必要とするわけではありません。

• 重要度の高いエリアに警備を集中
• 低リスクエリアは巡回頻度を削減
• 防犯カメラとの組み合わせで効率化

3. 人的警備と機械警備の最適な組み合わせ
多くの企業では人的警備と機械警備をうまく使い分けて、混乱を予防したり、自社の防犯を行っています。それぞれの特性を活かした組み合わせを検討しましょう。

• 定型的な監視業務は機械警備で対応
• 臨機応変な対応が必要な場面は人的警備
• コスト効率を考慮した最適配分

契約期間と支払い条件の見直し

契約条件の見直しも、コスト削減の重要なポイントです。

1. 長期契約によるメリット・デメリット
長期契約には割引が適用されることが多いですが、一方で柔軟性が失われるデメリットもあります。自社の状況に応じて最適な契約期間を選択しましょう。

2. 支払い方法の最適化
年払いや半期払いなど、まとめて支払うことで割引を受けられる場合があります。キャッシュフローと相談しながら、最適な支払い方法を選択してください。

3. 自動更新条項の見直し
多くの契約には自動更新条項が含まれていますが、これが価格の硬直化につながることがあります。定期的な見直し機会を設けることで、常に適正価格を維持できます。

付帯サービスの精査

警備契約には様々な付帯サービスが含まれていることがありますが、実際には利用していないものも多いです。

• 不要な報告書作成業務
• 過剰な巡回頻度
• 利用頻度の低い緊急対応サービス

これらを見直すことで、基本料金を抑えることが可能です。

ステップ5：価格交渉を成功させる実践的テクニック

最後のステップは、実際の価格交渉です。準備した情報を活用し、効果的な交渉を行いましょう。

交渉前の準備

成功する価格交渉のためには、十分な準備が不可欠です。

1. 交渉材料の整理

• 他社見積もりとの比較表
• 現在の契約期間と実績
• 今後の契約継続意向
• 改善要望事項のリスト

2. 交渉の目標設定

• 最低限達成したい削減率
• 理想的な契約条件
• 譲歩可能な項目の整理

3. 意思決定者の同席
交渉をスムーズに進めるため、社内の意思決定者が同席することが重要です。その場で判断できる体制を整えましょう。

効果的な交渉の進め方

業者の利益が残る適性価格にて、粘り強く交渉を行えば大幅な削減をすることも可能です。以下のポイントを意識して交渉を進めましょう。

1. Win-Winの関係構築
一方的な値下げ要求ではなく、両者にメリットのある条件を模索します。

• 長期契約による安定収入の保証
• 支払い条件の改善（前払いなど）
• 業務範囲の明確化による効率化

2. 段階的な交渉アプローチ
いきなり大幅な値下げを要求するのではなく、段階的にアプローチします。

• まず現状の問題点を共有
• 他社比較を提示し、市場価格を認識してもらう
• 具体的な削減案を提示
• 妥協点を探りながら合意形成

3. 代替案の提示
単純な値下げが難しい場合は、以下のような代替案を検討します。

• サービス内容の見直しによるコスト削減
• 複数拠点の一括契約による割引
• 繁忙期・閑散期の料金差別化

交渉決裂時の対応

現在の警備会社との交渉が決裂した場合は、警備会社の変更も視野に入れる必要があります。その際の注意点：

• 契約解除に伴う違約金の確認
• 引き継ぎ期間の設定
• 従業員への説明と協力要請
• セキュリティの継続性確保

特に機械警備から他社への切り替えの場合は、機器の入れ替えなど物理的な作業も発生するため、十分な準備期間を設けることが重要です。

警備費用削減を成功させるための3つの重要ポイント

ここまで5つのステップを詳しく解説してきましたが、最後に警備費用削減を成功させるための重要なポイントを3つお伝えします。

1. 品質と価格のバランスを重視する

警備費用の削減は重要ですが、セキュリティレベルを下げてしまっては本末転倒です。必要な警備品質を維持しながら、適正価格を実現することが大切です。安易な値下げではなく、効率化による削減を目指しましょう。

2. 定期的な見直しを習慣化する

警備費用の最適化は一度きりの取り組みではありません。市場環境や自社の状況は常に変化するため、定期的（年1回程度）に契約内容を見直す習慣をつけることが重要です。

3. 専門家の活用も検討する

警備費用の削減には専門的な知識や交渉スキルが必要な場合があります。自社での対応が難しい場合は、コスト削減の専門家やコンサルタントの活用も検討してみてください。専門家の知見を活用することで、より大きな削減効果が期待できます。

まとめ：適正な警備費用で安心・安全を確保する

警備費用の削減は、単なるコストカットではありません。適正な価格で必要十分なセキュリティを確保することで、企業の健全な経営に貢献します。

本記事でご紹介した5つのステップを実践することで、多くの企業で20～30％程度の削減が可能です。特に、長年同じ警備会社と契約を続けている企業や、大手警備会社のみと取引している企業では、さらに大きな削減余地がある可能性があります。

重要なのは、現状に満足せず、常により良い条件を模索し続けることです。警備会社との関係を見直し、Win-Winの関係を構築することで、持続可能なコスト削減を実現できるでしょう。

ぜひ、この機会に自社の警備費用を見直し、適正価格での契約を実現してください。それが、企業の競争力強化と持続的な成長につながる第一歩となるはずです。

よくある質問

Q1. 警備会社を変更する際のリスクは？

警備会社の変更には、引き継ぎ期間中のセキュリティリスクや、新しい警備員への教育期間が必要になるなどのリスクがあります。これらのリスクを最小化するためには、十分な引き継ぎ期間を設け、段階的に移行することが重要です。また、契約解除に伴う違約金の有無も事前に確認しておく必要があります。

Q2. 機械警備の契約期間はどれくらいが適切？

機械警備の契約期間は、一般的に機器の償却期間に合わせて5～7年程度で設定されることが多いです。ただし、償却期間終了後も同じ料金で契約が継続されることがあるため、償却完了のタイミングで料金の見直しを行うことが重要です。

Q3. 地域密着型の警備会社の信頼性は？

地域密着型の警備会社の信頼性を判断する際は、設立年数、警備業の認定証の有無、地域での実績、既存顧客の評判などを確認することが重要です。また、業界団体への加盟状況や、緊急時の対応体制なども重要な判断材料となります。

Q4. 相見積もりを取る際、現在の警備会社に知られたくない場合は？

相見積もりを取ることは正当な企業活動であり、隠す必要はありません。ただし、配慮が必要な場合は、見積もり依頼時に守秘義務について明確にし、情報管理を徹底することで対応できます。また、コンサルタントなど第三者を通じて見積もりを取得する方法もあります。

Q5. 警備費用削減の効果はどれくらいで現れる？

契約条件の見直しによる削減効果は、新契約開始と同時に現れます。ただし、年間契約の場合は契約更新のタイミングまで待つ必要があることもあります。一般的には、交渉開始から3～6ヶ月程度で新しい契約条件での運用が開始されることが多いです。

詳しい資料は以下よりご確認いただけます。