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海外出張の急病対応を誤ると訴訟リスク?日本語医療相談で企業を守る方法
海外出張中の従業員が急病になった場合、企業の対応次第では重大な法的責任を問われる可能性があることをご存知でしょうか。2015年には東京高裁が「企業は海外勤務者の健康・安全に配慮する義務がある」と判決を下しており、企業の安全配慮義務はもはや国内だけの話ではありません。言語の壁による医療ミスのリスク、高額な医療費、そして最悪の場合には訴訟に発展する可能性まで、海外出張における健康管理は企業にとって避けて通れない重要課題となっています。
そこで本記事では、海外出張中の急病対応で企業が直面する法的リスクとその回避方法、そして24時間日本語で相談できる医療サービスの活用方法について、具体的な対策を交えながら詳しく解説します。
海外出張の急病対応で企業が負う法的責任とは
企業が従業員を海外出張に送り出す際、多くの担当者は航空券や宿泊先の手配に注力しがちですが、実は最も重要なのは従業員の健康と安全を守る体制づくりです。
労働契約法に基づく安全配慮義務
安全配慮義務というのは労働契約法第5条に定められた会社の義務です。この義務は、単に国内勤務の従業員だけでなく、海外出張や海外赴任中の従業員に対しても適用されます。
重要なポイントは以下の3つです:
- すべての会社がすべての従業員に対して負う
- 安全には心身の健康が含まれる
- 具体的内容は個別状況によって異なる
特に海外出張においては、企業側が社員の状況をすぐ把握できる体制を構築しておきましょうという対策が求められています。
予見可能性と結果回避可能性
必ずしも生じたすべての事態について会社が責任を負うわけではなく、予見可能性と結果回避可能性の有無によって、責任の所在が判断されます。
つまり、企業は以下の2点を満たす必要があります:
- 従業員の健康リスクを事前に予見できたか
- そのリスクを回避するための合理的な対策を講じていたか
海外出張における急病は十分に予見可能なリスクであり、企業がこれに対する適切な対策を怠った場合、安全配慮義務違反として法的責任を問われる可能性が高くなります。
海外出張中の急病リスクが企業に与える影響
海外出張中の急病対応を誤ると、企業は様々なリスクに直面することになります。これらのリスクは、単に法的な問題だけでなく、経済的損失や企業イメージの毀損にもつながります。
訴訟リスクと損害賠償
海外出張中に従業員が重篤な病気になったり、最悪の場合死亡したりした場合、遺族から安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求される可能性があります。業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負っていたという判例もあり、企業の責任は重大です。
特に注意すべきは、海外赴任者は、国内勤務者と比較して自殺者数が約6倍にのぼりという深刻な統計データです。メンタルヘルスの問題も含めて、企業は包括的な健康管理体制を構築する必要があります。
高額な医療費負担
海外での医療費は日本と比較して非常に高額になることが多く、特にアメリカなどでは、簡単な治療でも数百万円の請求が来ることは珍しくありません。治療を受けた国にもよりますが、海外では医療費が高額になる場合もあるため、企業として事前の対策が不可欠です。
労災保険が適用される場合でも、治療を受けた病院に全額自己負担で治療代を支払い、請求書類を揃えて所轄の労働基準監督署へ提出する必要があり、一時的に大きな資金負担が発生します。
業務継続性への影響
重要なプロジェクトを担当する従業員が海外出張中に急病で倒れた場合、業務の遅延や取引先との信頼関係の毀損など、ビジネスに直接的な影響が生じます。適切な医療サポートがなければ、現地での治療が長期化し、プロジェクトの大幅な遅延につながる可能性もあります。
言語の壁がもたらす医療リスクの実態
海外での急病時に最も大きな障害となるのが言語の問題です。医療という専門性の高い分野では、わずかなコミュニケーションミスが重大な結果を招く可能性があります。
症状を正確に伝えられないリスク
医療現場では、患者の症状を正確に把握することが適切な治療の第一歩となります。しかし、言語が通じない環境では、痛みの程度や部位、既往歴やアレルギー情報などの重要な情報が正確に伝わらない可能性があります。
例えば、「鈍い痛み」と「鋭い痛み」の違いや、「断続的」と「持続的」の違いなど、日本語でも説明が難しい微妙なニュアンスを外国語で伝えることは、語学力に自信がある人でも困難です。
治療方針の理解不足による問題
医師から提案される治療方針や薬の副作用、手術のリスクなどの説明を正確に理解できない場合、適切な判断ができません。特に緊急手術が必要な場合、インフォームドコンセント(十分な説明に基づく同意)が得られないまま治療が進められるリスクがあります。
文化的な違いによる医療観の相違
国によって医療に対する考え方や治療方針は大きく異なります。日本では一般的でない治療法を勧められたり、逆に日本で標準的な治療が受けられなかったりする場合があります。このような文化的な違いを理解し、適切に対応するためにも、日本語でのサポートは不可欠です。
企業が取るべき海外出張者の健康管理対策
海外出張における健康リスクを最小限に抑えるため、企業は体系的な対策を講じる必要があります。ここでは、実践的な対策を段階的に解説します。
出張前の準備と体制構築
海外出張する社員向けに、企業内の海外出張マニュアルを作成しましょう。マニュアルには以下の内容を含めることが重要です:
- 緊急時の連絡先リスト(現地の日本領事館、提携医療機関など)
- 健康状態申告書の提出義務
- 必要な予防接種の確認
- 常備薬の準備と処方箋の英訳
- 危険情報レベル3になったら退避の準備を始めるなどの具体的な対応基準
24時間対応可能な医療相談体制の確立
最も効果的な対策の一つが、24時間日本語で医療相談ができるサービスの導入です。日本人医師によるオンライン相談を通じて、現地での急な体調不良やメンタルヘルスの問題を即座に相談できます。
このようなサービスのメリットは:
- 症状を母国語で正確に伝えられる
- 日本の医療基準に基づいたアドバイスが受けられる
- 現地医療機関での治療方針についてセカンドオピニオンが得られる
- メンタルヘルスの相談も気軽にできる
現地医療機関との連携体制
出張先でのトラブル時、確実に対処してもらえるように現地の警備会社と連携を図っておきましょう。また、信頼できる医療機関のリストアップと事前の提携も重要です。
特に以下の点を確認しておくことが推奨されます:
- 日本語対応可能な医療機関の有無
- 医療通訳サービスの利用可能性
- キャッシュレス診療の可否
- 緊急搬送体制の確認
日本語医療相談サービスの選び方
海外出張者向けの日本語医療相談サービスは複数存在しますが、企業のニーズに合ったサービスを選ぶことが重要です。ここでは、サービス選定の際のポイントを解説します。
サービス提供範囲の確認
まず確認すべきは、サービスの対応地域と時間です。地域に限定はなく、世界中で"ジャパンスタンダード"のサービスを提供できるサービスを選ぶことで、どこに出張しても安心です。
また、24時間365日体制で通訳サポートが受けられることも重要な要件です。時差を考慮すると、日本の営業時間だけでは対応できないケースが多いためです。
医療従事者の質と専門性
相談に応じる医療従事者の質も重要な選定基準です。日本人医師 20名、看護師・救急救命士 21名と提携し、日本人のためのアシスタンスを実現しているサービスのように、十分な人員体制を持つサービスを選ぶことが推奨されます。
特に重要なのは、単なる通訳ではなく、医療の専門知識を持った日本人医師が対応できることです。これにより、現地医師の診断や治療方針について、専門的な見地からアドバイスを受けることができます。
緊急時の対応能力
急病の中には、緊急搬送が必要なケースもあります。世界40社と114機の専用機ネットワークを構築しているようなサービスであれば、緊急医療搬送が必要な場合でも迅速な対応が可能です。
また、隣国の適切な医療施設までの緊急移送や、日本人医療従事者エスコートでの帰国移送をコーディネートできる体制があることも重要です。
労災保険と海外旅行保険の活用方法
海外出張中の医療費については、労災保険や海外旅行保険を活用することで、企業の負担を軽減できます。ただし、それぞれに適用条件や注意点があるため、正しい理解が必要です。
労災保険の適用条件
海外での業務が「海外出張」として取り扱われる場合には国内での災害と同様に労災保険給付を受けることができます。ただし、以下の点に注意が必要です:
- 国内の事業場の指揮命令に従って業務に従事している場合には海外出張となります
- 海外出張期間中のプライベートな時間(観光目的の移動、食事中等)に起こった傷病に対しては、労災が適用となりません
- 業務起因性と業務遂行性の両方が認められる必要がある
重要なのは、海外での勤務が長期にわたる場合でも、国内の事業場の指揮命令に従って業務に従事している場合には海外出張となりますという点です。期間の長短ではなく、指揮命令関係で判断されます。
海外旅行保険の重要性
労災保険でカバーされない部分を補うため、海外旅行保険への加入は必須です。民間の海外旅行保険は業務中なのか私的な目的なのかは問わず、適用となります。
海外旅行保険を選ぶ際のポイント:
- 治療・救援費用の補償限度額(最低でも3,000万円以上を推奨)
- キャッシュレス診療の可否
- 既往症や持病の取り扱い
- 24時間日本語サポートの有無
保険適用外のケースへの対応
一般的に、既往症、持病など一般的には保険適用外の病状は海外旅行保険の対象外となります。しかし、企業向けの包括的な医療サポートサービスを利用すれば、これらのケースでも支援を受けることができます。
特に慢性疾患を持つ従業員や、定期的な服薬が必要な従業員を海外出張に送る場合は、保険だけでなく、包括的な医療サポートサービスの導入を検討すべきです。
実践的な緊急時対応フロー
海外出張中に従業員が急病になった場合、迅速かつ的確な対応が求められます。ここでは、実践的な対応フローを時系列で解説します。
初動対応(発症から1時間以内)
急病が発生した場合の初動対応は極めて重要です。以下の手順で対応します:
- 安全確保:まず従業員の安全を確保し、必要に応じて救急車を手配
- 医療相談サービスへの連絡:24時間対応の日本語医療相談サービスに連絡し、症状を説明
- 本社への報告:緊急連絡網に従い、本社の担当部署に状況を報告
- 医療機関の選定:医療相談サービスのアドバイスに基づき、適切な医療機関を選定
医療機関での対応(受診時)
医療機関を受診する際は、以下の点に注意が必要です:
- 通訳の確保:日本人コーディネーターを通しての電話通訳や、医療通訳またはアテンドの派遣を活用
- 診断内容の確認:診断書や処方箋の内容を必ず確認し、不明な点は質問
- 医療費の支払い:領収書を必ず受け取り、明細を確認
- 継続的なモニタリング:現地担当医と定期的に連絡を取り、容態の変化をモニターして報告
事後対応と再発防止
急病対応が一段落した後も、以下の対応が必要です:
- 詳細報告書の作成:発症から回復までの経緯を詳細に記録
- 保険請求手続き:労災保険や海外旅行保険の請求手続きを速やかに実施
- 再発防止策の検討:同様の事態を防ぐための対策を検討し、マニュアルを更新
- 従業員へのフォローアップ:帰国後も継続的な健康管理とメンタルケアを実施
健康経営の観点から見た海外勤務者支援
海外出張者の健康管理は、単なるリスク対策ではなく、健康経営の重要な一環として位置づけるべきです。従業員の健康を守ることは、企業の持続的成長にもつながります。
予防医療の重要性
日本人医師による定期的な健康チェックやアドバイスを受けることができ、従業員の健康管理が一元化されます。これにより、急病の発生自体を予防することができます。
具体的な予防策として:
- 出張前の健康診断の義務化
- 渡航先の感染症情報の提供と予防接種の推奨
- 時差ボケ対策や現地での生活指導
- 定期的なオンライン健康相談の実施
メンタルヘルス対策の強化
海外出張は身体的な健康だけでなく、精神的な健康にも大きな影響を与えます。特に海外赴任者は、国内勤務者と比較して自殺者数が約6倍にのぼりという深刻なデータが示すように、メンタルヘルス対策は極めて重要です。
効果的なメンタルヘルス対策:
- 定期的なオンラインカウンセリングの提供
- 現地でのストレス要因の把握と改善
- 家族を含めたサポート体制の構築
- 帰国後のリエントリーショック対策
投資対効果の観点
重症化の予防や病気の早期発見が可能となり、企業が負担する医療費の削減にも繋がります。健康管理への投資は、以下のような形で企業に還元されます:
- 医療費の削減(重症化予防による)
- 生産性の向上(健康な従業員による)
- 離職率の低下(安心して働ける環境による)
- 企業イメージの向上(従業員を大切にする企業として)
まとめ:企業が今すぐ取るべきアクション
海外出張における急病対応は、企業の安全配慮義務の観点から避けて通れない重要課題です。言語の壁による医療リスク、高額な医療費、そして最悪の場合の訴訟リスクを考えると、事前の対策は必須といえます。
企業が今すぐ取るべきアクションは以下の通りです:
- 現状の把握:現在の海外出張者支援体制を総点検し、不足している部分を明確化
- 24時間日本語医療相談サービスの導入検討:従業員がいつでも母国語で医療相談できる環境を整備
- 包括的な健康管理体制の構築:予防から緊急時対応、事後フォローまでの一貫した体制づくり
- マニュアルの整備と教育:具体的な対応手順を明文化し、関係者への周知徹底
『ヨクミル』の導入は、企業の法的リスクの軽減にも繋がります。従業員の命と健康を守ることは、企業の最も基本的な責務です。今こそ、海外出張者の健康管理体制を見直し、安心して業務に専念できる環境を整える時です。
詳しい資料は以下よりご確認いただけます。

