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子供が留学先で病気に!保険があっても病院に行けない理由と対処法
お子様を海外へ留学させる予定のご家庭にとって、現地での病気やケガは最も心配な問題の一つです。「海外旅行保険に加入しているから大丈夫」と考えている保護者の方も多いかもしれません。しかし、実際には保険に加入していても、すぐに適切な医療を受けられないケースが多数報告されています。
海外の医療システムは日本とは大きく異なり、特に欧米諸国では「ファミリードクター制度」が主流となっています。この制度では、日本のように体調が悪くなったらすぐに専門医を受診することができません。まずはかかりつけ医(ファミリードクター)の予約を取り、診察を受けてから必要に応じて専門医への紹介状をもらうという流れになります。
そこで本記事では、留学中のお子様が病気になった際に直面する医療システムの違いや、保険があっても病院にすぐに行けない理由、そして親として準備すべき対処法について詳しく解説します。
海外の医療システムと日本との違い
海外での医療受診を困難にしている最大の要因は、日本と海外の医療システムの根本的な違いにあります。日本では当たり前のように行っている医療機関の利用方法が、海外では通用しないことが多いのです。
ファミリードクター制度とは
多くの欧米諸国では「ファミリードクター制度」が採用されています。カナダでは、ファミリードクター制度が主流なので、まずはかかりつけのファミリードクターが診察後、必要に応じて病院や専門医が紹介されるという流れになります。 この制度では、患者は特定の医師を「かかりつけ医」として登録し、健康上の問題が生じた際は、まずその医師の診察を受ける必要があります。
日本のように、症状に応じて直接専門医を受診することはできません。例えば、皮膚に異常があっても、いきなり皮膚科に行くことはできないのです。まずファミリードクターの診察を受け、必要と判断された場合のみ、専門医への紹介状が発行されます。
予約制による待ち時間の問題
ファミリードクター制度のもう一つの大きな特徴は、完全予約制であることです。予約しないとだから、三日はかかるのよ。 という実例もあるように、体調が悪くなってもすぐに診てもらえるわけではありません。一般的に、予約から実際の診察まで数日から1週間程度かかることも珍しくありません。
さらに深刻なのは、専門医の受診までの待ち時間です。ファミリードクターから専門医への紹介状をもらっても、専門医の予約が取れるまでにさらに時間がかかります。症状によっては、専門医の診察を受けるまでに数週間から数か月待たされることもあるのです。
日本との医療文化の違い
日本では、患者が自由に医療機関を選択できる「フリーアクセス制」が採用されています。体調が悪ければ、近所のクリニックに直接行き、その日のうちに診察を受けることができます。しかし、日本の病院とは違い、カナダの総合病院では基本的に初診外来は受け付けておらず、直接専門医に診てもらう制度もありません 。
このような医療システムの違いを理解していないと、留学中のお子様が体調を崩した際に、適切な対応ができない可能性があります。「保険があるから大丈夫」という考えだけでは、実際の医療アクセスの問題は解決されないのです。
保険に加入していても病院に行けない3つの理由
海外旅行保険や留学保険に加入していれば安心と考えがちですが、実際には保険があっても適切な医療を受けられないケースが多く存在します。ここでは、その主な理由を3つ挙げて詳しく説明します。
理由1:飛び込み受診ができない医療システム
日本では体調が悪くなったら、保険証を持って直接病院に行けば診察を受けられます。しかし、海外では事情が全く異なります。多くの国では、医療機関への飛び込み受診は原則として受け付けていません。
特に総合病院では、救急外来を除いて、事前の予約なしに診察を受けることはほぼ不可能です。クリニックレベルでも、予約なしの患者を診察しない医療機関が多数を占めています。これは医療制度の違いによるもので、保険の有無とは関係ありません。
つまり、いくら高額な保険に加入していても、予約システムを理解し、適切な手続きを踏まなければ、医師の診察すら受けられないのです。
理由2:言語の壁による診察の困難さ
医療現場でのコミュニケーションは、日常会話とは比べものにならないほど難しく、専門的です。医療に関するやりとりは、普段の会話より難しいです。 症状を正確に伝えられなければ、適切な診断や治療を受けることができません。
特に問題となるのは以下のような場面です。
- 痛みの程度や種類を細かく説明する必要がある時
- 医師からの指示や薬の服用方法を理解する時
- 検査の必要性や治療方針について説明を受ける時
- 同意書や問診票に記入する時
医療専門用語は、日常的な英語学習では習得が困難です。例えば「ズキズキする痛み」「締め付けられるような痛み」といった微妙なニュアンスを英語で表現することは、留学生にとって非常に難しいでしょう。
理由3:緊急時の対応システムの違い
日本では、急病の際は救急車を呼ぶか、夜間・休日診療所を利用することができます。しかし、海外では緊急時の対応システムも大きく異なります。
まず、救急車の利用基準が日本よりも厳格で、本当に生命に関わる状況でなければ利用できないことが多いです。また、利用した場合の費用も高額になることがあります。一部の国では、救急車の利用に数万円から数十万円かかることもあるのです。
次に、ウォークインクリニック(予約なしで受診できる診療所)の存在を知らない留学生が多いという問題があります。ウォークインクリニックは、そうしたファミリードクターを持たない人が利用する医療機関で、観光滞在者や留学生、ワーキングホリデー滞在者も利用できます。 しかし、これらの施設の場所や利用方法を事前に把握していなければ、緊急時に適切に利用することは困難です。
留学前に親が準備すべき5つの対策
お子様を安心して留学させるためには、事前の準備が欠かせません。ここでは、親として準備すべき具体的な対策を5つご紹介します。
1. 現地の医療システムの詳細な調査
留学先の国や地域の医療システムについて、詳しく調査することが第一歩です。調査すべき項目には以下のようなものがあります。
- ファミリードクター制度の有無と登録方法
- 一般的な診察予約の取り方と待ち時間
- 救急医療システムの利用方法と費用
- ウォークインクリニックの場所と営業時間
- 日本語対応可能な医療機関の有無
- 処方箋の取得方法と薬局の利用方法
これらの情報は、留学先の日本領事館や現地の日本人コミュニティ、留学経験者から収集することができます。また、大学の留学生支援センターも貴重な情報源となります。
2. 医療英語の基礎習得サポート
お子様が基本的な医療英語を身につけられるよう、サポートすることが重要です。最低限、以下のような表現は覚えておく必要があります。
- 症状を説明する表現(痛み、吐き気、めまいなど)
- アレルギーや既往症を伝える表現
- 薬の服用に関する質問や確認の表現
- 緊急時に助けを求める表現
市販の医療英語教材や、オンラインの医療英語学習サービスを活用することも有効です。また、よく使う表現をカードにまとめて持たせるなど、実践的な工夫も大切です。
3. 緊急連絡体制の構築
留学中のお子様が病気になった際、迅速に対応できる連絡体制を整えておくことが不可欠です。以下の点を確認しておきましょう。
- 24時間連絡が取れる方法の確立(時差を考慮)
- 現地の緊急連絡先リストの作成
- 保険会社の緊急サポートデスクの連絡先
- 現地の日本人医師や日本語対応可能な医療機関の情報
- 大学や寮の健康管理担当者の連絡先
これらの情報は、お子様と共有するだけでなく、親御さんも常に手元に置いておく必要があります。
4. 持病や常備薬の英文証明書準備
お子様に持病がある場合や、常備薬を服用している場合は、必ず英文の診断書や処方箋を準備しておきましょう。これらの書類には以下の情報を含める必要があります。
- 診断名(英語の正式名称)
- 現在の治療内容
- 服用している薬の成分名(商品名ではなく一般名)
- 服用方法と用量
- アレルギーの有無
これらの書類は、かかりつけ医に依頼して作成してもらいます。また、薬については、留学期間分を持参するだけでなく、現地での入手方法も確認しておくことが大切です。
5. 現地サポートサービスの活用検討
最近では、留学生向けの医療サポートサービスが充実してきています。これらのサービスには、以下のような機能があります。
- 24時間日本語対応の医療相談
- 現地医療機関の予約代行
- 通訳サービスの提供
- 緊急時の現地サポート
- 保険請求手続きの支援
費用はかかりますが、お子様の安全と健康を考えれば、検討する価値は十分にあります。特に、医療システムが複雑な国や、言語の壁が高い地域への留学の場合は、積極的に活用を検討すべきでしょう。
実際に病気になった時の対処法
準備を整えていても、実際にお子様が病気になった時は冷静な対応が求められます。ここでは、症状の程度に応じた具体的な対処法を解説します。
軽症の場合の対応手順
風邪や軽い腹痛など、緊急性の低い症状の場合は、以下の手順で対応します。
1. 症状の記録
まず、症状がいつから始まったか、どのような症状があるかを詳しく記録します。体温、痛みの程度、食欲の有無なども含めて記録しておくと、医師への説明がスムーズになります。
2. 大学の健康センターへの相談
多くの大学には、学生向けの健康センターや保健室があります。軽症の場合は、まずここで相談することをお勧めします。基本的な薬の処方や、医療機関への紹介も行ってくれます。
3. ウォークインクリニックの利用
大学の健康センターが利用できない場合は、ウォークインクリニックを利用します。待ち時間は長いことがありますが、予約なしで診察を受けられる利点があります。
4. 保険会社への連絡
診察を受ける前に、加入している保険会社に連絡を取ることも重要です。提携医療機関の紹介や、キャッシュレス診療の手配をしてもらえる場合があります。
緊急時の対応方法
高熱が続く、激しい痛みがある、呼吸が苦しいなど、緊急性の高い症状の場合は、迅速な対応が必要です。
1. 救急サービスへの連絡
生命に関わる可能性がある場合は、ためらわずに現地の救急番号(アメリカ・カナダは911、ヨーロッパは112など)に連絡します。オペレーターには、簡潔に症状と住所を伝えます。
2. 病院の救急外来への直接受診
自力で移動できる場合は、最寄りの病院の救急外来(Emergency Room)に直接行くこともできます。ただし、待ち時間が非常に長いことがあるので、症状の緊急度を正確に伝えることが重要です。
3. 親への連絡
可能な限り早い段階で、日本の親御さんに連絡を取ります。時差があっても、緊急時は遠慮せずに連絡することが大切です。
通院が必要になった場合の注意点
継続的な通院が必要になった場合は、以下の点に注意が必要です。
予約の確実な管理
海外では予約時間に遅れると診察を受けられないことがあります。予約時間の15分前には到着するよう心がけ、変更が必要な場合は早めに連絡します。
診療記録の管理
診察内容、処方された薬、次回の予約日などを必ず記録しておきます。これらの情報は、別の医師に診てもらう際や、帰国後の治療継続に必要となります。
薬の服用管理
処方された薬については、名前、用量、服用方法を正確に理解する必要があります。不明な点は必ず薬剤師に確認し、副作用が出た場合はすぐに医師に相談します。
医療費の支払いと保険請求
診察料や薬代の領収書は必ず保管し、保険請求に必要な書類を確実に入手します。診断書が必要な場合は、その場で依頼することが重要です。
医療サポートサービスの選び方
留学中の医療不安を解消するため、専門のサポートサービスを利用することは賢明な選択です。ここでは、サービスを選ぶ際のポイントを解説します。
サービス内容の確認ポイント
医療サポートサービスを選ぶ際は、以下の点を確認することが重要です。
24時間対応の可否
時差を考慮すると、24時間365日対応可能なサービスであることが理想的です。緊急時にすぐに相談できる体制が整っているかを確認しましょう。
対応言語とスタッフの質
日本語対応はもちろん、現地の言語にも精通したスタッフがいるかを確認します。医療知識を持つスタッフが対応してくれるサービスがより安心です。
サービスの範囲
医療相談だけでなく、病院の予約代行、通訳サービス、保険請求支援など、どこまでサポートしてくれるかを確認します。包括的なサービスほど、いざという時に頼りになります。
現地ネットワークの充実度
留学先の地域に、提携医療機関や現地スタッフがいるかも重要なポイントです。現地の医療事情に詳しいサポートが受けられるかを確認しましょう。
費用対効果の考え方
医療サポートサービスの利用には費用がかかりますが、以下の観点から費用対効果を考えることが大切です。
リスクとコストのバランス
サービス利用料と、実際に病気になった際の精神的・金銭的負担を比較検討します。特に持病がある場合や、医療システムが複雑な地域への留学では、サービスの価値が高まります。
保険との組み合わせ
海外旅行保険でカバーされない部分を、サポートサービスで補完できるかを確認します。両者を上手く組み合わせることで、より充実した医療サポート体制を構築できます。
利用実績と評判
実際にサービスを利用した人の評価や、対応事例を確認することも重要です。特に、自分の子供と同じような状況でサービスを利用した人の体験談は参考になります。
契約前の確認事項
サービスを契約する前に、必ず以下の点を確認しておきましょう。
- サービス利用の具体的な手順
- カバーされる地域と期間
- 利用回数の制限の有無
- キャンセルや変更の条件
- 緊急時の対応フロー
- 個人情報の取り扱い方針
これらの情報を十分に理解した上で、お子様の留学先や期間、健康状態に最適なサービスを選択することが大切です。
よくある質問と回答
留学中の医療に関して、多くの保護者の方から寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q: 海外旅行保険だけでは不十分なのでしょうか?
A: 海外旅行保険は医療費をカバーしてくれる重要な備えですが、それだけでは実際の医療アクセスの問題は解決されません。保険は主に金銭的な補償を提供するものであり、現地の医療システムを理解し、適切に利用するためのサポートまでは含まれていないことが多いです。特に、言語の壁や予約システムの違いなどは、保険だけでは対応できない課題です。
Q: 現地の日本人医師を探す方法はありますか?
A: 現地の日本領事館や日本人会が、日本人医師や日本語対応可能な医療機関のリストを提供していることがあります。また、留学先の大学の国際センターでも情報を得られる場合があります。ただし、日本人医師がいても予約が取りにくかったり、専門分野が限られていることもあるので、過度に依存せず、現地の医療システムも利用できるよう準備しておくことが大切です。
Q: 薬は日本から持参すべきでしょうか?
A: 常備薬や持病の薬は、留学期間分を持参することをお勧めします。ただし、国によっては持ち込める薬の種類や量に制限があるので、事前に確認が必要です。また、現地で同じ薬や代替薬を入手する方法も調べておくと安心です。市販薬については、現地でも購入できることが多いですが、成分や用量が異なる場合があるので注意が必要です。
Q: 歯科治療は保険でカバーされますか?
A: 多くの海外旅行保険では、歯科治療は補償対象外となっています。急な歯痛など緊急の場合のみカバーされることもありますが、一般的な歯科治療や予防的な処置は自己負担となることがほとんどです。そのため、留学前に歯科検診を受け、必要な治療を済ませておくことが重要です。
Q: メンタルヘルスの問題にはどう対応すればよいですか?
A: 留学中はストレスや孤独感から、メンタルヘルスの問題が生じることがあります。多くの大学には、留学生向けのカウンセリングサービスがあるので、積極的に利用することをお勧めします。また、日本語でのオンラインカウンセリングサービスも増えているので、必要に応じて活用できます。重要なのは、問題を一人で抱え込まず、早めに相談することです。
まとめ:安心して留学生活を送るために
お子様の留学は、本人にとっても親御さんにとっても大きな挑戦です。特に健康面での不安は、留学生活の質に大きく影響します。本記事で解説したように、海外の医療システムは日本とは大きく異なり、保険に加入していても適切な医療を受けるためには、事前の準備と正しい知識が不可欠です。
重要なのは、以下の3つのポイントを押さえることです。
1. 現地の医療システムを理解する
ファミリードクター制度や予約システムなど、留学先の医療システムの特徴を事前に把握し、利用方法を理解しておくことが基本です。
2. 言語の壁に備える
医療英語の基礎を身につけ、必要な書類を英文で準備しておくことで、いざという時にスムーズな対応が可能になります。
3. サポート体制を整える
保険だけでなく、現地での医療サポートサービスの活用も検討し、包括的な支援体制を構築することが安心につながります。
留学は素晴らしい経験となる一方で、健康面でのリスクも伴います。しかし、適切な準備と対策を講じることで、これらのリスクは大幅に軽減できます。お子様が安心して学業に専念し、充実した留学生活を送れるよう、親として最善の準備を整えてあげてください。
医療面での不安を解消し、万全の体制で留学に臨むことで、お子様の留学は必ず実り多いものになるはずです。
詳しい資料は以下よりご確認いただけます。

