「人手不足で現場が限界なのに、どこに相談すればいいかわからない」「外国人材を採用したいけど、手続きが複雑そうで不安…」そんな悩みを抱えながら毎日を乗り越えている九州の介護事業者の方に、この記事はきっと役立ちます。九州全域で急増する介護人材ニーズに対応するため、外国人材紹介の仕組みから費用相場、実際の手順まで、現場目線でわかりやすく解説します。
目次

九州7県(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島)では、高齢化率が全国平均を上回る地域が多く、介護需要は年々拡大しています。厚生労働省の推計によると、2025年には全国で約32万人の介護人材が不足するとされており、九州においてもその影響は深刻です。福岡県だけでも2025年度末時点で約1万8,000人規模の介護職員不足が見込まれています。
特に郡部・離島を抱える長崎県や鹿児島県では、若年層の流出が著しく、施設定員に対して充足率が85%を下回る事業所も珍しくありません。現場では「夜勤を1人でこなさなければならない」「新規の利用者を断らざるを得ない」という声が相次いでいます。
こうした状況を打開する手段として、近年急速に注目を集めているのが外国人介護人材の活用です。2019年に創設された「特定技能」制度や、技能実習制度の改編(育成就労制度への移行)、そしてEPA(経済連携協定)に基づく受け入れなど、複数の入口が整備されてきました。
九州では福岡市を中心に外国人介護スタッフの受け入れ実績が増加しており、2023年度の九州管内の特定技能「介護」の在留者数は前年比で約38%増加しています。フィリピン、インドネシア、ベトナム、ミャンマーなどから多くの人材が九州の施設で活躍しています。
| 都道府県 | 高齢化率(2023年) | 介護施設・事業所数(概数) | 介護職員不足の深刻度 |
|---|---|---|---|
| 福岡県 | 27.8% | 約9,200か所 | ★★★★☆ |
| 佐賀県 | 29.5% | 約1,500か所 | ★★★★☆ |
| 長崎県 | 32.1% | 約2,800か所 | ★★★★★ |
| 熊本県 | 30.4% | 約3,600か所 | ★★★★☆ |
| 大分県 | 33.2% | 約2,100か所 | ★★★★★ |
| 宮崎県 | 31.8% | 約2,000か所 | ★★★★☆ |
| 鹿児島県 | 32.7% | 約3,100か所 | ★★★★★ |
✅ ポイント:外国人材は即戦力になり得る
特定技能「介護」の資格を持つ外国人材は、日本語能力試験N4以上・介護技能評価試験合格が必須条件となっており、一定の実務能力が担保されています。九州内でも複数の施設が「即日現場に入れた」「利用者との関係構築が早かった」と評価しています。
⚠️ 注意:外国人材だけでは根本解決にならない
外国人材の受け入れは人材不足対策の一つですが、職場環境や処遇が整っていなければ離職につながります。日本人スタッフと同様に、キャリアパスや賃金体系を見直すことが、長期的な解決策となります。
2019年4月にスタートした「特定技能1号(介護)」は、現在の九州の介護施設で最も多く活用されている制度です。在留期間は最長5年(更新可)で、通算5年の就労が可能です。2号への移行は介護分野では設けられていないため(2024年現在)、長期的な就労を希望する場合は介護福祉士取得後の「介護」在留資格(永続的に在留可能)への切り替えが一般的なキャリアパスとなっています。
受け入れ要件としては、特定技能外国人の報酬を同等業務に従事する日本人と同等以上とすること、支援計画の策定(または登録支援機関への委託)が義務付けられています。
技能実習制度は2024年から「育成就労制度」へ移行が始まっており、2027年をめどに完全移行する予定です。育成就労制度では、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を習得させることが目的です。技能実習との大きな違いは、一定条件のもとで転籍が認められる点であり、労働者の権益保護が強化されます。
介護分野の育成就労では、日本語能力N5相当以上・入国後に日本語研修を受けることが求められます。九州の施設では、ベトナムやインドネシアからの育成就労生が多く、送り出し機関との連携が重要です。
EPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者の受け入れは、フィリピン・インドネシア・ベトナムの3か国と締結されています。候補者は日本の介護施設で就労しながら介護福祉士試験の合格を目指します。合格後は「介護」在留資格を取得して長期就労が可能になります。
受け入れ要件として、研修経費の補助(JICWELSを通じた国の補助制度あり)、日本語研修施設での事前研修(6か月程度)が含まれます。受け入れ窓口はJICSという団体が担っており、九州では熊本・福岡の施設での受け入れ実績が特に多いです。
外国人でも日本の介護福祉士国家資格を取得すれば、在留資格「介護」を得て、在留期間の更新を繰り返すことで事実上の永続的就労が可能です。留学生として介護福祉士養成校に入学し、卒業後そのまま九州内の施設に就職するケースが増えています。福岡県内には介護福祉士養成校が複数あり、外国人留学生の卒業・就職実績も多数あります。
| 制度名 | 在留期間 | 受け入れ可能な施設種別 | 日本語要件 | 主な送り出し国 |
|---|---|---|---|---|
| 特定技能1号(介護) | 最長5年 | 訪問系以外の介護事業所全般 | N4以上 | ベトナム・フィリピン・ミャンマー等 |
| 育成就労(旧技能実習) | 3年 | 訪問系以外 | N5相当以上 | ベトナム・インドネシア・中国等 |
| EPA介護福祉士候補者 | 4年(合格後は「介護」へ) | 介護保険適用施設 | 研修後N3〜N4程度 | フィリピン・インドネシア・ベトナム |
| 在留資格「介護」 | 更新で永続的に可 | 全種別 | 介護福祉士取得レベル | 国籍問わず |
✅ 特定技能が九州で最もスピーディ
九州の事業者アンケートでは、特定技能を選ぶ理由として「採用から就労開始までが最短2〜3か月と短い」「即戦力として現場に入れる」が上位に挙がっています。育成就労(技能実習)と比べて受け入れ手続きの負担が小さい点も評価されています。
⚠️ 訪問介護への配置制限に注意
特定技能・育成就労ともに、訪問介護(居宅サービス)への従事は原則認められていません(2024年現在)。在宅系サービスに外国人材を配置する場合は「介護」在留資格保有者(介護福祉士)に限られますので、事業種別を確認してから採用計画を立ててください。

九州で外国人介護人材を確保するルートは主に「①人材紹介会社(有料職業紹介)」「②監理団体(育成就労・技能実習)」「③登録支援機関経由の自社採用」の3つです。それぞれに特徴があり、施設の規模・採用経験・予算によって最適な選択肢が異なります。
九州に拠点を持つ、または九州実績が豊富な人材紹介会社を選ぶことが成功の鍵です。以下の5点を必ず確認しましょう。
| 選定ポイント | 優良会社の特徴 | 注意すべき会社の特徴 |
|---|---|---|
| 対応エリア | 九州全7県への対応実績あり、現地訪問対応可 | 福岡市のみ対応、地方は電話・メールのみ |
| 紹介手数料の透明性 | 年収の15〜20%程度・見積書が詳細 | 「成功報酬のみ」だが内訳不明確 |
| 定着支援 | 入社後1年間の定期面談・日本語講師手配 | 入社後のサポートなし・担当者の連絡が取れない |
| 送り出し機関との関係 | 直接提携、渡航費・教育費の内訳開示あり | 多段階の仲介あり、外国人材への過剰な手数料請求の可能性 |
| 実績の開示 | 紹介件数・定着率・利用施設の声を公開 | 具体的数値なし・口コミが少ない |
特定技能外国人を受け入れる際、事業者は本人の生活支援・相談対応などの「支援計画」を実施する義務があります。これを自社で行わず、「登録支援機関」に委託することが可能です。委託費用は月額2万〜5万円程度が九州の相場で、行政書士事務所・社会保険労務士事務所・専門会社が登録支援機関として活動しています。採用を紹介会社に、支援業務を登録支援機関に分けることでコストダウンが図れるケースもあります。
✅ 九州の自治体補助金も積極活用を
福岡県・熊本県・鹿児島県などでは、外国人介護人材の受け入れを支援する補助金・助成金制度を設けています。例えば福岡県の「外国人介護人材受入れ環境整備事業」では、日本語研修費用の一部補助(上限20万円程度)が受けられる場合があります。紹介会社の担当者に地元の補助制度についても確認しましょう。
⚠️ 悪質ブローカーに注意
「採用費0円」「海外から直接紹介」と謳い、外国人材に対して高額な手数料を請求する悪質業者が九州でも報告されています。外国人材が借金を抱えて来日するケースは、定着率の低下・失踪リスクに直結します。許可番号の確認と、外国人材側のコスト負担の有無を必ず確認してください。
外国人介護人材の採用費用は、制度・ルート・送り出し国によって大きく異なります。ここでは九州エリアでの実際の相場感をもとに整理します。特定技能の場合、初期費用として「紹介手数料+在留資格申請費用+渡航費・研修費」がかかり、総額では1人あたり30万〜80万円程度が九州の一般的な範囲です。
| 費用項目 | 特定技能1号 | 育成就労(旧技能実習) | EPA候補者 |
|---|---|---|---|
| 紹介・送り出し手数料 | 20万〜60万円/人 | 30万〜70万円/人(監理費含む) | JICWELSへの登録料等(一部補助あり) |
| 在留資格申請費用 | 5万〜15万円(行政書士費用含む) | 10万〜20万円 | JICWELSが一括対応 |
| 渡航費・初期研修費 | 5万〜15万円程度 | 10万〜20万円程度 | 国の補助制度あり(最大30万円) |
| 登録支援機関委託費 | 月額2万〜5万円×12か月 | 監理団体費として月額3万〜5万円 | 施設内でのサポートが基本 |
| 初年度総費用(目安) | 50万〜100万円/人 | 80万〜150万円/人 | 40万〜80万円/人(補助後) |
外国人介護人材の給与は、日本人と同等以上の待遇が法律で義務付けられています。九州の介護施設での月給相場は以下の通りです。特定技能の場合、基本給15万〜20万円程度(経験・地域により変動)に住宅手当・通勤手当が加算されるケースが一般的です。最低賃金は2024年10月改定で、福岡県は992円/時、熊本・鹿児島・宮崎・大分は各県870〜890円台となっており、月給換算での整合性確認が必要です。
「外国人材の採用は高い」と感じる事業者も多いですが、比較対象を日本人の中途採用と比べてみると見え方が変わります。日本人介護士の転職市場では、求人媒体費用・採用担当者工数・研修費を合計すると1人あたり30万〜80万円程度かかるのが現実です。外国人材は初期費用こそかかりますが、離職率が低い傾向(九州の受け入れ施設調査で2年定着率60〜70%)があり、中長期的なROIは高くなるケースが少なくありません。
✅ 補助金・助成金で実質コストを削減
厚生労働省の「外国人介護人材受入れ施設等環境整備事業」では、ICT機器の導入補助(上限100万円程度)や日本語学習教材の提供が受けられます。また、各県の社会福祉協議会や国際交流基金が提供する日本語研修補助も見逃せません。採用前に都道府県の担当窓口へ相談することを強くお勧めします。
⚠️ 「格安プラン」には隠れコストが潜む
「紹介手数料無料・月額費用だけ」と謳う業者の中には、後から「書類作成費」「通訳費」「帰国時費用負担」などを請求するケースがあります。契約前に必ず「最初から最後までのトータルコスト見積もり」を書面で取得してください。

外国人介護人材の採用を決める前に、まず社内の受け入れ体制を整えることが重要です。具体的には「受け入れ担当者(メンター)の選定」「外国人材が使う日本語マニュアルの整備」「宿舎・生活環境の確認」「日本人スタッフへの事前説明」の4点を先に進めてください。
特に既存スタッフへの説明と理解促進は、採用後の職場融和に直結します。「なぜ外国人材が必要なのか」「どんな業務をお願いするのか」を丁寧に共有することで、受け入れ後のトラブルを大幅に減らすことができます。
紹介会社と契約後、候補者の紹介を受けます。書類選考→オンライン面接(日本語・業務質問)→最終確認という流れが一般的です。特定技能の場合、紹介から内定まで1〜2か月、その後在留資格の変更申請(国内在留者の場合)または在留資格認定証明書の申請(海外からの場合)が必要です。
特定技能の在留資格申請は出入国在留管理庁への申請となります。審査期間は1〜3か月程度が目安ですが、書類不備があると大幅に延長されるため、行政書士への依頼を強くお勧めします。九州管内(福岡入管・那覇入管など)での処理件数が増加しており、繁忙期には審査期間が長くなる傾向があります。
| フェーズ | 期間の目安 | 主な作業・手続き | 担当 |
|---|---|---|---|
| 受け入れ準備 | 1〜2か月 | メンター選定・マニュアル整備・スタッフ説明 | 施設担当者 |
| 紹介・マッチング | 1〜2か月 | 書類選考・オンライン面接・内定 | 紹介会社+施設 |
| 在留資格申請 | 1〜3か月 | 申請書類準備・出入国管理庁への申請 | 行政書士+施設 |
| 入国・事前研修 | 2〜4週間 | 日本語・施設ルール・介護実技の導入研修 | 施設+登録支援機関 |
| 就労開始〜3か月 | 〜3か月 | OJT・定期面談・生活サポート | メンター+登録支援機関 |
| 定着フォロー期 | 〜1年以上 | 資格取得支援・キャリア面談・給与見直し | 施設管理者 |
✅ 行政書士への依頼で申請ミスを防ぐ
在留資格申請の書類は複雑で、記載ミスや添付漏れがあると申請が却下・差し戻されて数か月のタイムロスが生じます。九州エリアには外国人在留資格申請を専門とする行政書士事務所が多数あり、費用は5万〜15万円程度。対応スピードと申請実績を必ず確認した上で依頼先を選んでください。
⚠️ 「不法就労」にならないよう在留カードの確認を徹底
在留カードの「就労制限の有無」欄や有効期限を必ず確認してください。在留資格の種類によっては介護業務への従事が認められていない場合があります。採用後も更新期限管理を施設として行うことが法令違反防止につながります。
せっかく採用した外国人スタッフが短期間で離職してしまうケースの多くは、「職場での孤立感」「日本語の壁による業務上の誤解」「文化的な摩擦」が原因です。九州内の受け入れ成功施設の共通点として、「日本人スタッフが外国人材の文化・宗教への理解を持っている」「相談しやすい雰囲気がある」「キャリアの見通しが示されている」の3点が挙げられています。
就労後の日本語能力向上は定着率に直結します。以下のような支援策を導入している九州の施設では、2年定着率が70%を超えるデータが出ています。
外国人材にとって、日本での生活は「初めて一人で慣れない環境に飛び込む」経験です。銀行口座の開設・携帯電話契約・住民登録といった生活手続きのサポートを施設側が丁寧に行うことで、信頼関係が早期に構築されます。特に離島や農村部の施設では、外出・買い物・医療機関へのアクセスが課題になることがあり、送迎サポートや生活品の購入支援を行っている施設もあります。
| 取り組み | 実施コスト(月額目安) | 定着率への影響(施設アンケート) | 難易度 |
|---|---|---|---|
| メンター制度の導入 | 担当者の時間コストのみ | 定着率が平均15%向上 | 低 |
| 就業時間内の日本語学習 | 5,000円〜1万円/人 | コミュニケーション課題が50%減少 | 低 |
| 多言語業務マニュアル整備 | 初期のみ(翻訳費10万円程度) | 業務ミスが40%減少 | 中 |
| 住宅補助(宿舎提供) | 1万〜3万円/人(家賃差額) | 採用応募数が2倍以上に増加 | 中 |
| キャリアパス面談(半年ごと) | 担当者の時間コストのみ | 3年定着率が10〜20%向上 | 低 |
✅ 介護福祉士取得を支援することが最強の定着策
外国人介護人材が介護福祉士を取得すると、在留資格「介護」へ変更でき、事実上永続的に日本で働くことができます。施設としても長期的な戦力として計算できるようになるため、受験費用・テキスト代・学習時間の確保を制度化することが、採用コストの回収と定着につながる最も効果的な投資です。
⚠️ 宗教・文化への配慮を忘れずに
ムスリムが多いインドネシア・ミャンマー出身のスタッフには、食事(ハラール対応)やお祈りの時間への配慮が必要です。「郷に入りては郷に従え」という考え方を押し付けることは、離職の大きな原因になります。食堂でのメニュー選択肢の確保や、お祈りスペースの設置といった合理的配慮を検討してください。

九州の介護業界が直面する深刻な人材不足に対して、外国人介護人材の活用は現実的かつ即効性のある対策の一つです。この記事で解説した内容を振り返ると、成功のポイントは「制度の正しい理解」「信頼できる紹介会社の選定」「受け入れ環境の整備」「継続的な定着支援」の4つに集約されます。
まず最初の一歩として、以下の3つのアクションを今週中に実行することをお勧めします。
人材難の時代において、外国人介護人材との協働は「特別なこと」ではなく、九州の介護を支える「当たり前の選択肢」になりつつあります。正しい知識と準備で、一歩踏み出してみてください。施設にとっても、外国人材にとっても、そして九州の高齢者にとっても、Win-Win-Winの未来を一緒に作っていきましょう。