「毎月の電気代が高すぎて、経営を圧迫している」「エアコンをつけないわけにはいかないけれど、もっと賢く使う方法があるはず」——そう感じている経営者・総務担当者の方は少なくありません。企業のエアコン電気代は、設定や運用を少し変えるだけで年間数十万円単位の削減が可能です。本記事では、今日から実践できる具体的な方法を網羅的に解説します。
目次

まず現状を正確に把握することが、削減への第一歩です。「なんとなく高い」ではなく、数値で理解することで、どこにどれだけのコスト削減余地があるかが見えてきます。
一般的なオフィスビルや店舗における電気代の内訳を見ると、空調(エアコン)が占める割合は全体の40〜60%に達することが多く、最大の電力消費源となっています。次いで照明が20〜30%、OA機器が10〜20%という構成が典型的です。つまり、エアコンの電気代を削減できれば、企業全体の電気代削減に直結します。
| 用途 | 割合の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 空調(エアコン) | 40〜60% | 季節・業種により変動大 |
| 照明 | 20〜30% | LED化で削減可能 |
| OA機器・PC | 10〜20% | 省エネPC化で削減可能 |
| 給湯・その他 | 5〜15% | 業種により大きく異なる |
企業のエアコン電気代は、従業員数・床面積・業種によって大きく異なります。以下は一般的な目安です。中小企業でも月数万〜数十万円、大企業では月数百万円以上になるケースも珍しくありません。
| 企業規模(従業員数) | 月額エアコン電気代の目安 | 年間換算 |
|---|---|---|
| 小規模(〜30名) | 3万〜10万円 | 36万〜120万円 |
| 中規模(30〜100名) | 10万〜50万円 | 120万〜600万円 |
| 大規模(100名〜) | 50万〜数百万円 | 600万円以上 |
2022年以降、電力単価は大幅に上昇しています。大手電力会社の電気料金は2023年時点で2020年比1.3〜1.5倍程度になっているケースも多く、従来の運用を続けるだけで電気代が自動的に膨らんでいます。だからこそ今、積極的な削減策を講じることが急務です。設備の見直し・運用改善・契約変更を組み合わせることで、年間20〜40%の削減も十分に実現可能です。
設備投資なしで、運用改善だけでも大きな削減効果が期待できます。従業員への周知・ルール化とあわせて実施することがポイントです。
環境省が推奨する室温の目安は、夏28℃・冬20℃です。エアコンの設定温度を1℃変えるだけで、消費電力が約10%変化するとされています。夏に27℃から28℃へ1℃上げるだけで、エアコンの消費電力を約10%カットできる計算です。月10万円のエアコン電気代なら、それだけで月1万円の削減につながります。
ただし、従業員の快適性と生産性への影響も考慮が必要です。一律に温度を上げるのではなく、部署・フロアごとの特性(日当たり・人員密度・発熱機器の量)に合わせた細かな設定が理想的です。
「誰もいないのにエアコンがついている」は、企業における最も典型的な電気代の無駄です。以下の対策を組み合わせましょう。
エアコンのフィルターが詰まると、空気の流れが悪くなり消費電力が増大します。メーカーの調査では、フィルターが汚れた状態では消費電力が最大25%増加するケースも報告されています。月1〜2回の定期清掃を習慣化するだけで、エアコンの効率を最大限に保つことができます。清掃の頻度を高めることは、ランニングコスト削減と機器の長寿命化の両方に貢献します。
風量を「自動」に設定することで、エアコンが効率的に出力を調整し、電力消費を最小化します。手動で「強風」に固定すると、必要以上のエネルギーを使い続けることになります。また、冷気は下に、暖気は上に溜まる性質があるため、夏は風向きを水平〜やや上向き、冬は下向きに設定することで、部屋全体を効率よく空調できます。

中長期的に見れば、設備の更新・追加投資が最も大きな削減効果をもたらします。初期費用はかかりますが、投資回収期間を正確に試算した上で判断しましょう。
エアコンのエネルギー効率を示す指標がAPF(通年エネルギー消費効率)です。APFの値が高いほど、少ない電力で多くの冷暖房ができます。2010年以前に導入した業務用エアコンのAPFは3〜4程度ですが、最新の高効率機ではAPF6〜8以上のものも登場しています。単純計算で消費電力を40〜50%削減できる可能性があります。
| 導入時期の目安 | APFの目安 | 最新機種比較での削減率目安 |
|---|---|---|
| 2005年以前 | 2.5〜3.0 | 約50〜60%の削減が可能 |
| 2006〜2010年 | 3.0〜4.0 | 約40〜50%の削減が可能 |
| 2011〜2018年 | 4.0〜5.5 | 約20〜35%の削減が可能 |
| 2019年以降(最新) | 6.0〜8.0以上 | 基準機種 |
業務用エアコン1台(10馬力クラス)の年間電気代が100万円の場合、APF3→APF6への更新で年間約50万円の削減が可能です。更新費用が150万円だとすれば、投資回収期間は約3年という計算になります。
インバーターエアコンは、コンプレッサーの回転数を細かく制御することで、必要な出力だけを使う仕組みです。一方、非インバーター(定速)機はON/OFFを繰り返すため、起動時に大量の電力を消費します。現在も定速タイプを使用している場合は、インバーター機への切り替えだけで30〜40%の省エネが期待できます。
ビルオートメーションシステム(BAS)やエネルギー管理システム(EMS)を導入すると、エアコンの稼働状況をリアルタイムで監視・制御できます。具体的には以下のような機能があります。
中規模オフィス(従業員50名)での導入事例では、BAS導入後にエアコン電気代が年間18%削減されたケースが報告されています。
電力の基本料金は「デマンド(最大需要電力)」によって決まります。30分間の平均電力使用量のピーク値が高いほど、翌年の基本料金が高くなる仕組みです。デマンドコントローラーを導入することで、ピーク時に自動でエアコンの出力を絞り、基本料金を5〜15%削減できます。電気代全体に占める基本料金の比率は30〜40%程度のため、この効果は非常に大きいと言えます。
エアコン本体の改善だけでなく、空間や環境を整えることでエアコンへの負荷を減らし、消費電力を大幅に下げることができます。
建物の断熱・遮熱性能を高めると、外気の影響を受けにくくなり、エアコンの稼働時間・出力を大幅に減らせます。主な対策と効果の目安は以下の通りです。
| 対策の種類 | 概算費用(目安) | 電気代削減効果(目安) |
|---|---|---|
| 窓用断熱フィルム貼付 | 1枚500〜3,000円 | 冷暖房費10〜20%削減 |
| 遮熱カーテン・ブラインド | 1窓5,000〜3万円 | 冷房費15〜25%削減 |
| 窓の複層ガラス化(内窓追加) | 1窓5万〜15万円 | 冷暖房費20〜30%削減 |
| 屋根・壁面断熱材追加 | 状況により異なる | 冷暖房費20〜40%削減 |
特に南向き・西向きの窓は夏場の日射熱の影響が大きく、遮熱フィルムや遮熱カーテンだけで冷房負荷を大幅に軽減できます。費用対効果が高い施策のため、まず窓周りの対策から着手するのがおすすめです。
オフィスでは適切な換気が法律で義務付けられていますが、換気のしすぎは冷暖房した空気を排出してしまい無駄になります。全熱交換型換気システム(熱交換換気)を導入すると、排気の熱エネルギーを回収して給気に利用するため、換気による空調負荷を50〜70%削減できます。また、サーキュレーターや天井扇を活用して室内の空気を循環させることで、エアコンの体感効率を高め設定温度を緩和することも可能です。
オフィス全体を一つのエアコンで管理するよりも、使用頻度・発熱量・人員密度に応じてゾーニングを行い、エリア別に個別制御することで大幅な省エネが可能です。例えば、サーバールームは24時間冷却が必要な一方、会議室は使用時のみ稼働すれば足ります。ゾーニングを適切に見直すだけで、年間で15〜25%の空調コスト削減に成功した事例があります。

設備や運用の改善だけでなく、電力契約そのものを見直すことで、消費電力量を変えずに電気代を削減できる場合があります。
企業が契約する電力料金プランは大きく分けて「低圧(従量電灯)」「高圧(業務用電力)」「特別高圧」があります。消費電力量が多い企業ほど、高圧・特別高圧契約への切り替えで単価を下げられる可能性があります。また、同一区分内でも時間帯別料金プラン・季節別料金プランへの変更で、夜間・休日の電気料金を安くできるケースがあります。
| 契約区分 | 対象の目安 | 電力単価の目安(従量部分) |
|---|---|---|
| 低圧(従量電灯) | 契約電力50kW未満 | 25〜35円/kWh |
| 高圧(業務用電力) | 契約電力50〜2,000kW | 15〜25円/kWh |
| 特別高圧 | 契約電力2,000kW以上 | 10〜18円/kWh |
2016年の電力小売り全面自由化以降、企業は電力会社を自由に選べます。新電力会社のプランに切り替えることで、大手電力会社比で5〜15%程度のコスト削減が可能なケースがあります。ただし、以下の点に注意が必要です。
屋上や駐車場に太陽光発電設備を設置し、日中の電力を自家消費することで、昼間のエアコン稼働にかかる電気代を大幅に削減できます。初期費用は大きいものの、FIT(固定価格買取制度)の自家消費型活用や、PPAモデル(初期費用ゼロで設置)を利用すれば、費用負担を軽減しながら導入できます。自家消費型太陽光の場合、設置後10〜15年で投資回収できるケースが多く、長期的には大きな節約になります。
省エネ設備の導入には、国や地方自治体からの補助金・税制優遇制度を活用できます。これを知っているかどうかで、実質的な初期投資額が大きく変わります。
主な補助金制度として以下が挙げられます(年度により内容・名称が変わるため、必ず最新情報を公式サイトで確認してください)。
省エネ設備の導入に際しては、税制面での優遇措置も活用できます。
これらを活用することで、実質的な導入コストを大幅に圧縮できます。顧問税理士や設備メーカー・販売店に相談しながら、利用可能な制度を積極的に活用しましょう。
国の補助金に加えて、都道府県・市区町村が独自の省エネ補助金・助成金を設けているケースも多くあります。特に中小企業向けの制度は手続きが比較的シンプルなものも多く、積極的に活用する価値があります。自治体の産業振興課・環境担当課や、地域の商工会議所に問い合わせてみましょう。

企業のエアコン電気代削減について、よくいただくご質問にお答えします。
企業のエアコン電気代削減を最大化するためには、一つの方法だけに頼るのではなく、複数の施策を組み合わせることが重要です。本記事で紹介した削減方法を改めて整理します。
| 施策 | 削減効果の目安 | 初期コスト | 着手のしやすさ |
|---|---|---|---|
| 設定温度の最適化 | 5〜15% | なし | ◎ 今日から可能 |
| タイマー・稼働時間管理 | 5〜10% | なし〜少額 | ◎ すぐ実施可能 |
| フィルター定期清掃 | 5〜25% | なし | ◎ 今日から可能 |
| 断熱・遮熱対策 | 10〜30% | 数千円〜数十万円 | ○ 比較的容易 |
| BAS・EMS導入 | 10〜20% | 数十万〜数百万円 | △ 計画・工事が必要 |
| 高効率エアコンへの更新 | 30〜50% | 数十万〜数百万円 | △ 計画・工事が必要 |
| 電力契約・プランの見直し | 5〜15% | なし | ○ 調査から着手可能 |
| 太陽光発電(自家消費) | 20〜40% | 大(補助金活用で軽減) | △ 長期計画が必要 |
まず「今すぐできる運用改善」から着手し、確実に効果を出しながら、中期的に設備更新・契約最適化へと展開するステップアップ型のアプローチが最も現実的で効果的です。「運用改善だけで15〜25%削減 → 設備更新でさらに30〜50%削減」というように積み上げることで、合計で年間30〜50%以上の削減を達成している企業も少なくありません。
補助金・税制優遇制度を上手く活用しながら、計画的に取り組んでいきましょう。まずは自社の電気代明細を見直し、エアコンが占める割合を把握するところから始めることをお勧めします。