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事業譲渡

A型事業所を売却する方法と手順を徹底解説

📅 2026年06月20日⏱ 約9分✍ 編集部

「A型事業所を売却したいけれど、どこから手をつければいいのか分からない」「障害福祉サービス事業所の売却は一般企業と何が違うのか」と悩んでいる経営者・法人の方は少なくありません。就労継続支援A型事業所は、障害のある方の就労支援という社会的使命を担いながら、同時に経営上の課題も抱えやすい事業形態です。後継者不在・収益悪化・多角化戦略など、売却を検討するきっかけはさまざまですが、福祉事業特有の規制や手続きを知らないまま進めると、多大な時間・コストのロスや行政処分リスクが生じます。本記事では、A型事業所の売却方法を【手順・相場・注意点・事例】まで徹底的に解説します。

目次

  1. A型事業所の売却とは?基本的な仕組みと特徴
  2. A型事業所を売却する主な方法・スキーム比較
  3. 売却価格(相場)の決まり方と評価ポイント
  4. 売却の具体的なステップと必要な手続き
  5. 売却成功のための準備と注意点
  6. A型事業所売却の実例・ケーススタディ
  7. よくある質問(FAQ)

A型事業所売却の契約場面・ビジネス交渉

A型事業所の売却とは?基本的な仕組みと特徴

就労継続支援A型事業所の概要

就労継続支援A型事業所(以下、A型事業所)とは、障害者総合支援法に基づき、一般就労が困難な障害のある方に雇用契約を結んだ上で就労の機会を提供する福祉サービス事業所です。利用者は事業所と雇用契約を締結し、最低賃金以上の賃金を受け取るのが原則です。運営には都道府県知事(または政令市・中核市)からの指定が必要であり、その指定は法人格を持つ団体に対して付与されます。

2024年時点で全国のA型事業所数は約4,000〜4,500カ所と推計されており、社会的需要は継続して高い水準を維持しています。一方、2018年の報酬改定以降、「生産活動収入による賃金支払い」が厳しく求められるようになり、収益モデルの転換が迫られた事業所も多く、売却・譲渡のニーズが増加傾向にあります。

一般企業の売却とどこが違うのか

A型事業所の売却が一般企業の売却と大きく異なる点は、「事業所指定」という行政上の許可が売却スキームを大きく左右することです。会社そのものを売買する「株式譲渡」であれば指定はそのまま引き継げますが、事業のみを移す「事業譲渡」の場合は買い手側が新たに指定申請を行う必要があります。この違いを理解していないと、手続きが止まったり、場合によっては利用者へのサービス提供が途切れるリスクが生じます。

また、利用者(障害のある方)の処遇・継続的なサービス提供について、都道府県・市町村の福祉主管課に対して十分な説明と承認が必要です。福祉事業所の売却は「誰に・どのように事業を承継するか」という社会的責任も強く問われます。

売却を検討する主な理由

A型事業所の経営者が売却を検討するきっかけとして、主に以下が挙げられます。

✅ メリット:売却によって得られるもの

⚠️ 注意点:福祉事業ならではのリスク

【表1】一般企業の売却とA型事業所の売却の主な違い
比較項目 一般企業(株式会社等) A型事業所(福祉法人含む)
根拠法令 会社法 障害者総合支援法・社会福祉法等
行政許可の移転 業種によるが比較的手続きが少ない 事業譲渡の場合は新規指定申請が必要
行政への届出・相談 原則不要(公正取引委員会届出は別) 都道府県・市町村への事前相談が必須
利用者(顧客)保護 消費者契約法等の一般法 障害福祉サービス受給者証・個別支援計画の継続管理が必要
売却価格の評価軸 純資産・利益・ブランド等 指定の価値・定員充足率・利用者稼働率等も加算

A型事業所を売却する主な方法・スキーム比較

①株式譲渡(会社ごと売却)

A型事業所を株式会社や合同会社が運営している場合、会社の株式(持分)を買い手に譲渡することで事業所ごと売却する方法です。この場合、都道府県の指定はそのまま引き継がれるため、行政手続きが比較的シンプルです。ただし、会社に紐づく債務・訴訟リスク・未払い残業代などの潜在債務も買い手が引き継ぐため、買い手は必ずデューデリジェンス(DD)を実施します。

株式譲渡は手続きのスピードと指定継続という点で最も使われるスキームです。売却後も会社の法人格は変わらないため、利用者への影響が最小限に抑えられる点も評価されます。

②事業譲渡(事業のみを売却)

法人格はそのままに、事業所として行っている就労継続支援A型の事業(人員・設備・契約等)だけを別の法人に譲渡する方法です。医療法人・社会福祉法人・NPO法人・株式会社など法人格の異なる事業体への移管に適しています。

この場合、買い手側が新たに都道府県の指定を取得する必要があります。通常、指定申請から指定まで2〜6カ月程度かかるため、サービス提供の空白期間が生じないよう入念なスケジュール管理が必要です。また、利用者ごとの受給者証・個別支援計画の引き継ぎについても事前に調整が必要です。

③合併・経営統合

複数の社会福祉法人や医療法人が合併する形で事業を統合するケースです。規模の経済を実現しやすく、特に地方の中小法人が大手法人のグループに入るパターンが増えています。合併の場合は社会福祉法や医療法に基づく手続きが別途必要となります。

④持分の一部譲渡・経営参加型

すぐに全部売却せず、まず株式・持分の一部(例:30〜50%)を買い手に譲渡し、その後段階的に全株式を譲渡する方法です。売り手が一定期間経営に関与しながら引き継ぎを行えるため、利用者・職員への影響を最小化しやすい点が特徴です。

✅ スキーム選択のポイント

A型事業所を運営する法人が株式会社・合同会社の場合は「株式譲渡」が最も手続きがシンプルです。社会福祉法人・NPO法人が運営する場合は原則として株式が存在しないため、「事業譲渡」か「合併」が選択肢になります。どのスキームが最適かは、法人形態・事業規模・買い手のニーズによって異なるため、専門のM&Aアドバイザーや社会保険労務士・行政書士に相談することを強く推奨します。

⚠️ 社会福祉法人の場合の特別な制約

社会福祉法人は非営利法人であり、株式や持分が存在しないため、一般的な「株式譲渡」は行えません。また、解散・合併には所轄庁(都道府県知事等)の認可が必要で、残余財産も国・地方公共団体等に帰属します。売却益を創業者が受け取る仕組み自体が制度上存在しないため、社会福祉法人の「売却」は実質的に「事業移管・合併」に限定されます。

【表2】A型事業所の売却スキーム比較
スキーム 指定の引き継ぎ 手続き期間の目安 向いている法人形態 売り手の売却益受取
株式譲渡 そのまま継続 1〜3カ月 株式会社・合同会社 可能(株式売却益)
事業譲渡 新規申請が必要 3〜8カ月 全法人形態 可能(法人への対価)
合併 合併法人が引き継ぐ 6カ月〜1年以上 社会福祉法人・医療法人 個人への売却益なし
持分一部譲渡 そのまま継続 段階的(1年以上も) 株式会社・合同会社 可能(段階的に受取)

A型事業所の就労支援現場・スタッフと利用者

売却価格(相場)の決まり方と評価ポイント

A型事業所の売却価格はどう決まるか

A型事業所の売却価格(評価額)は、一般的な企業価値評価手法に加え、福祉事業特有の評価軸が加わります。主な評価方法として以下の3つが用いられます。

実際の取引では、純資産をベースにしつつ「のれん代(指定の価値・利用者数・稼働率)」を加算する方法が多く採用されています。稼働率が高く(定員充足率80%以上)、収支が安定している事業所は高値がつきやすい傾向があります。

売却価格に影響する主な要因

以下の要因が評価額に大きく影響します。

具体的な相場感

業界内の取引事例や専門M&A仲介会社のデータを参考にすると、A型事業所(定員10〜20名規模・株式会社運営)の売却価格は以下のような水準です。

【表3】A型事業所の売却価格目安(規模・稼働率別)
定員規模 稼働率 純資産(目安) のれん代目安 売却価格レンジ(目安)
定員10名以下 60〜70% 100〜300万円 100〜300万円 200〜600万円
定員10〜20名 70〜85% 300〜800万円 500〜1,500万円 800〜2,300万円
定員20〜30名 85%以上 800〜2,000万円 1,000〜3,000万円 1,800〜5,000万円
定員30名超・多拠点 85%以上 2,000万円〜 3,000万円〜 5,000万円〜1億円超

※上記はあくまで目安であり、実際の評価額は個別事情により大きく異なります。複数の専門家から査定を取得することを強く推奨します。

✅ 高値売却を実現する3つのポイント

  1. 稼働率を売却前に改善する:稼働率80%以上を維持することで、のれん代が大幅に上乗せされる傾向があります。売却の6〜12カ月前から利用者募集を強化することが重要です。
  2. 財務書類を整備する:過去3年分の決算書・試算表・資金繰り表を整理し、買い手が安心できるような透明性を担保します。
  3. コンプライアンスを徹底する:行政指導・勧告の履歴がないことは評価を大きく左右します。売却前に自己点検を実施しましょう。
⚠️ 売却価格を下げてしまう要因

売却の具体的なステップと必要な手続き

STEP1:売却の方針決定と専門家への相談

まず、売却の目的・希望条件(売却価格・時期・売却後の関与度合い等)を明確にします。その上で、以下の専門家に相談することを推奨します。

STEP2:事業所の価値評価(バリュエーション)と書類整備

専門家とともに事業所の価値評価を実施します。合わせて以下の書類を整備します。

STEP3:買い手候補の探索とマッチング

M&A仲介会社または自社のネットワークを通じ、買い手候補(アクワイアラー)を探します。福祉業界のM&Aプラットフォーム(TRANBI・M&Aサクシード等)に掲載する方法もあります。複数の候補と秘密保持契約(NDA)を締結した上でノンネームシート(事業概要書)を提示し、意向確認を行います。

STEP4:デューデリジェンス(DD)の実施

買い手候補が絞り込まれたら、詳細な調査(DD)が行われます。財務DD・法務DD・事業DD・コンプライアンスDD(指定基準適合状況等)が主な対象です。このフェーズで問題点が発覚すると価格の下落交渉や取引中断につながるため、事前の自己点検が重要です。

STEP5:最終条件交渉・基本合意書の締結

DDの結果を踏まえ、売却価格・条件・引き継ぎスケジュール等を最終交渉します。合意に達したら「基本合意書(LOI)」を締結し、独占交渉権を設定します。

STEP6:行政への届出・指定申請手続き(事業譲渡の場合)

事業譲渡スキームの場合、買い手法人が都道府県・市町村へ指定申請を行います。申請に必要な主な書類は以下の通りです。

申請から指定まで通常2〜4カ月かかります。スムーズに進めるには、担当窓口への事前相談が不可欠です。

STEP7:最終契約書の締結・クロージング

株式譲渡契約書(SPA)または事業譲渡契約書を締結し、代金の受け渡し・株式移転・事業移転を実行します(クロージング)。この際、利用者・職員への説明・周知も同時並行で行います。

✅ スムーズな売却のためのタイムライン目安

株式譲渡スキームの場合:相談開始から最短3〜6カ月でクロージングが可能です。事業譲渡スキームの場合は行政指定申請が加わるため、通常6〜12カ月を見込んでください。

⚠️ クロージング後の義務にも注意

売却後も一定期間(通常1〜3年)は「表明保証条項」に基づく売り手の責任が継続します。DDで開示しなかった重大な事実が事後に判明した場合、損害賠償請求の対象になる可能性があります。売却前の情報開示は誠実に行うことが長期的にも重要です。

【表4】A型事業所売却のプロセスとおおよそのスケジュール
フェーズ 主な内容 株式譲渡の期間目安 事業譲渡の期間目安
①方針決定・相談 専門家選定・目標設定 1〜2週間 1〜2週間
②価値評価・書類整備 バリュエーション・資料作成 2〜4週間 2〜4週間
③買い手探索・マッチング NDA・ノンネームシート提示 1〜3カ月 1〜3カ月
④DD(調査) 財務・法務・事業調査 3〜6週間 3〜6週間
⑤条件交渉・基本合意 LOI締結 1〜2週間 1〜2週間
⑥行政手続き 届出・指定申請 変更届のみ(数週間) 2〜4カ月
⑦最終契約・クロージング SPA締結・代金決済 1〜2週間 1〜2週間
合計目安 3〜6カ月 6〜12カ月

M&Aアドバイザーとの財務・法務デューデリジェンス会議

売却成功のための準備と注意点

売却前に実施すべき自己点検チェックリスト

A型事業所の売却を成功させるために、事前に以下の項目を徹底的に点検・改善しておくことが重要です。買い手のDDで問題が発覚すると、価格交渉が不利になるか取引が破談になるリスクがあります。

売却先選びで失敗しないためのポイント

買い手を選ぶ際は、単純に価格が高い先を選ぶのではなく、以下の視点で総合的に判断することが重要です。

税務上の注意点(売却益の税金)

A型事業所の売却に伴う税務処理は、スキームによって大きく異なります。

税務スキームを事前に公認会計士・税理士と十分に検討し、売却後の税負担を最小化する戦略を立てることが不可欠です。例えば、株式の取得原価が低い場合は売却益が大きくなるため、株式譲渡の前に役員退職金を活用して利益を圧縮する手法が取られることもあります(税理士への確認が必須)。

✅ 売却を有利に進めるための3つの戦略

  1. 複数の買い手候補に同時並行でアプローチ:競争環境を作ることで交渉力が高まり、価格・条件ともに有利な結果を引き出しやすくなります。
  2. 売却タイミングを計る:稼働率が高い・報酬改定の影響が少ない時期(4月〜9月)が市場に出すタイミングとして評価されやすい傾向があります。
  3. 専門の福祉M&A仲介会社を活用:一般M&A仲介と異なり、福祉業界特有の行政手続きに精通したアドバイザーを選ぶことで、手続きの不備によるロスを防げます。
⚠️ 利用者・職員への説明義務を怠ると大きなトラブルに

A型事業所の売却において、利用者(障害のある方)・そのご家族・職員への適切な説明は法的義務というだけでなく、倫理的にも非常に重要です。特に利用者は生活に直結するサービスを受けている方々であり、「突然経営者が変わった」「内容が変わった」という状況は大きな不安を生みます。売却決定後、クロージング前に担当行政への報告と並行して、利用者・家族・職員への個別説明会を実施することを強く推奨します。

A型事業所売却の実例・ケーススタディ

事例①:後継者不在による株式譲渡(定員20名・株式会社)

地方都市で就労継続支援A型事業所を単独運営していた60代の代表者が、後継者不在を理由にM&A仲介会社へ相談。定員20名・稼働率85%・年間売上約4,500万円・EBITDA約800万円の事業所でした。

仲介会社の紹介で、同県内で複数の障害福祉事業所を運営する株式会社が買い手となり、株式譲渡スキームで交渉が進みました。EBITDAの4倍相当として最終的な売却価格は約3,200万円で合意。相談開始から約5カ月でクロージングが完了しました。売却後も代表者は1年間顧問として在籍し、引き継ぎを支援しました。

事例②:経営難による事業譲渡(定員15名・NPO法人)

報酬改定(2018年度)の影響で収益が悪化し、生産活動収入だけでは利用者への最低賃金支払いが難しくなったNPO法人が、近隣の社会福祉法人へ事業を譲渡した事例です。

NPO法人は株式がないため、事業譲渡スキームを選択。社会福祉法人側が都道府県への指定申請を行い、申請から指定まで約3カ月を要しました。事業譲渡の対価は約500万円(主に設備・備品の時価評価)でした。利用者15名全員が新事業所に継続利用でき、職員も全員再雇用されました。

事例③:多拠点展開を目的とした経営統合(3事業所・首都圏)

首都圏でA型事業所を3カ所運営する株式会社が、障害福祉事業を全国展開する大手グループ会社に株式を100%譲渡した事例です。3事業所合計定員75名・稼働率88%・年間売上約1.8億円・EBITDA約2,200万円の規模でした。

大手グループとしては新規エリアへの参入と事業基盤の強化が目的であり、EBITDAの5倍相当で売却価格は約1億1,000万円で合意。FAを起用した6カ月間のプロセスを経てクロージングが完了しました。このケースでは売り手の創業者が大きな創業者利益を得ることができた成功事例です。

A型事業所の利用者と支援スタッフが協力する明るい職場風景

よくある質問(FAQ)

Q. A型事業所の売却は誰でもできますか?社会福祉法人は売却できないと聞きましたが。
A. A型事業所の「売却」が可能かどうかは、運営主体の法人形態によって異なります。株式会社・合同会社が運営する場合は株式譲渡または事業譲渡が可能で、創業者が売却益を受け取ることができます。一方、社会福祉法人は非営利法人であり、持分・株式が存在しないため、一般的な意味での「売却」は行えません。社会福祉法人の場合は、「事業移管」または「合併」という形での承継が主な手段となり、個人が売却益を受け取る仕組みはありません。NPO法人も同様に、株式・持分の譲渡は行えず、事業譲渡という形になります。
Q. 売却すると利用者(障害者)の方への支援は続けられますか?
A. 適切に売却・承継手続きを行えば、利用者の支援は継続されます。株式譲渡の場合は法人・指定がそのまま引き継がれるため、サービスの継続性は最も高く保たれます。事業譲渡の場合も、利用者への事前説明・新事業所への個別支援計画の引き継ぎを丁寧に行うことで、利用者の安心・安全なサービス継続が実現できます。ただし、売却をきっかけにサービスの質が低下したり、利用者が不安を感じたりしないよう、買い手の選定と引き継ぎプロセスには十分な配慮が必要です。利用者・家族への説明は、クロージングの少なくとも1〜2カ月前に行うことが望ましいです。
Q. 売却先はどうやって見つければよいですか?自分で買い手を探すことはできますか?
A. 売却先を探す主な方法は以下の通りです。①M&A仲介会社(福祉業界専門が望ましい)への依頼、②M&Aマッチングプラットフォーム(TRANBI・M&Aサクシード・バトンズ等)への掲載、③業界団体・士業のネットワーク活用、④知り合いの事業者への直接打診、の4つが代表的です。自分で買い手を探すことも可能ですが、守秘義務の管理・条件交渉・行政手続き等で専門知識が必要な場面が多いため、仲介会社や専門家のサポートを活用することを推奨します。M&A仲介会社の手数料は成功報酬型が多く、売却価格の3〜5%程度(最低料金が設定されている場合も)が一般的です。
Q. 売却価格はどのくらいを期待できますか?赤字の事業所でも売れますか?
A. 売却価格は事業所の規模・稼働率・収益性・立地等によって大きく異なりますが、定員10〜20名・稼働率70〜85%の標準的な事業所で800万〜2,300万円程度が一つの目安です(詳細は本文の表3を参照)。赤字事業所でも「指定の価値(新規指定申請の手間を省ける)」「立地・設備」「利用者数」等に価値を見出す買い手が存在するため、売却自体は可能なケースも多いです。ただし赤字が続く場合は価格が低くなる傾向があり、200万〜500万円程度の象徴的な価格になることも珍しくありません。まずは専門家への相談・査定依頼から始めることをお勧めします。
Q. 売却の話が従業員や利用者に漏れてしまうのが心配です。機密はどう守ればよいですか?
A. M&Aの検討段階での情報漏洩は、職員の離職・利用者の不安・買い手候補の撤退等、さまざまなリスクを招きます。機密管理のポイントは以下の通りです。①買い手候補との接触前に必ず「秘密保持契約(NDA)」を締結する、②情報開示は「知る必要がある人」に限定する(最初は経営者のみ)、③仲介会社を通じた場合は「ノンネームシート」(事業所名・地名等を伏せた資料)で概要だけを先行開示する、④クロージングが確定するまで利用者・職員への説明は原則控える。仲介会社を介することで機密管理のプロセスが確立されるため、専門家活用の大きなメリットの一つです。
Q. 売却後も一定期間、現在の経営者が事業に関わることはできますか?
A. はい、可能です。多くの案件では、売却後も元の経営者が「顧問」「非常勤取締役」「施設長」等の形で一定期間(通常6カ月〜2年)関与する条件が契約に盛り込まれます。これは「アーンアウト条項」や「顧問契約」として設定されることが多く、引き継ぎ期間中の顧問料が支払われることもあります。また、関与の範囲・報酬・期間・競業避止義務(同業他社の設立禁止期間)等については最終契約書に明確に記載しておくことが重要です。関与を望まない場合も、買い手から一定期間の関与を求められることがありますので、事前に自分の希望を明確に伝えておきましょう。

まとめ:A型事業所の売却を成功させる5つのポイント

  1. 法人形態に合ったスキームを選ぶ:株式会社なら株式譲渡、NPO・社会福祉法人なら事業譲渡・合併が基本。行政手続きへの影響が大きく異なる。
  2. 売却前に事業所の状態を最大化する:稼働率・コンプライアンス・書類整備を整えることが、高値売却への最短ルート。
  3. 専門家(M&A仲介・税理士・行政書士)を活用する:福祉業界特有の規制に詳しい専門家
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