「借金を抱えたまま会社を売れるのだろうか」「九州でM&Aや事業売却を相談できる専門家はいるのか」——そんな不安を抱えながら、毎日資金繰りに頭を悩ませている経営者の方へ。結論からお伝えすると、借金がある状態でも会社を売却することは可能です。むしろ、早めに動くほど選択肢が広がります。本記事では、九州エリアで借金ありの会社売却を成功させるための具体的な手順・相場・注意点をすべて解説します。
目次

✅ ポイント:借金(負債)があっても会社売却は可能。負債を含めた企業価値(EV)で評価されるため、収益力・資産・将来性が高ければ買い手はつきます。
多くの経営者が「借金があるから会社は売れない」と思い込んでいますが、これは大きな誤解です。M&Aや事業売却において、買い手が重視するのは将来生み出せるキャッシュフローです。負債は企業価値(EV:Enterprise Value)の計算に織り込まれるため、借金があること自体が売却の絶対的な障壁にはなりません。
たとえば、総資産3億円・有利子負債1億円の会社でも、年間営業利益が3,000万円あれば十分に買い手候補が見つかります。ポイントは「借金の額」ではなく「返済能力と収益性のバランス」です。
資産より負債が多い「債務超過」の状態でも売却の道はあります。ただしこの場合、事業譲渡(特定の資産・権利だけを売る手法)が現実的な選択肢になります。株式を売買する株式譲渡では買い手に債務が引き継がれるため、債務超過企業の株式を額面以上で売却するのは難しい局面もあります。しかし、優良な顧客リスト・技術・人材・ブランドがあれば、事業価値として評価される事業譲渡で十分な対価を得られます。
借金が膨らみ、資金繰りが完全に行き詰まってから動くと、選択肢は「破産」か「特別清算」に絞られてしまいます。一方、まだキャッシュが残っている段階で動けば、M&A・事業譲渡・民事再生との併用など複数の手段を組み合わせることができます。九州の金融機関やM&A仲介各社のデータでも、「早めに相談した案件ほど成立率が高く、経営者の手取り額も大きい」という結果が出ています。
⚠️ 注意:資金ショートが目前に迫ってからでは、売却交渉に必要な「時間」が確保できません。最低でも手元資金が3〜6か月分ある段階での相談が理想です。
| 財務状況 | 売却可能性 | 推奨手法 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 借金あり・黒字経営 | 高い | 株式譲渡・株式交換 | 最も条件が良い |
| 借金あり・赤字経営 | 中程度 | 事業譲渡・第三者割当増資 | 事業の強みが鍵 |
| 債務超過・事業継続中 | やや低い | 事業譲渡・スポンサー型民事再生 | 早期着手が必須 |
| 債務超過・資金ショート寸前 | 低い | スポンサー型破産・特別清算 | 弁護士との連携必須 |
✅ 九州M&Aの追い風:後継者不足・地域経済の活性化ニーズを背景に、九州では中小企業M&Aの件数が年々増加。地元企業同士の案件だけでなく、全国の買い手から九州企業を狙う引き合いも増えています。
中小企業庁の統計によると、全国の中小企業M&A支援機関登録件数は2023年度に過去最高を更新しました。九州・沖縄エリアでも登録機関数が増加し、福岡・熊本・鹿児島・長崎・大分などを拠点とする地域密着型の仲介業者が台頭しています。
特に注目すべきは福岡市のM&Aハブ化です。スタートアップ集積・大手企業の九州拠点増加・九州フィナンシャルグループなど地銀系ファンドの活発化により、福岡を窓口にした九州全域の案件成立数が増えています。2022〜2023年のデータでは、九州エリアの中小M&A案件成立数は前年比で約15〜20%増という複数の仲介会社の報告があります。
M&Aの企業価値評価は複雑ですが、中小企業では主に「年買法(年倍法)」が使われます。営業利益(またはEBITDA)の3〜5倍が目安とされることが多く、九州の中小企業でも概ね同様です。
| 業種 | EBITDA倍率の目安 | 売却価格例(EBITDA3000万円の場合) | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| IT・SaaS・システム開発 | 4〜8倍 | 1.2億〜2.4億円 | ストック収益型は高評価 |
| 製造業(部品・精密) | 3〜5倍 | 0.9億〜1.5億円 | 技術・特許保有で加点 |
| 建設・土木 | 2〜4倍 | 0.6億〜1.2億円 | 許認可・人材が評価軸 |
| 飲食・小売 | 1〜3倍 | 0.3億〜0.9億円 | 立地・ブランドが鍵 |
| 介護・医療・福祉 | 3〜6倍 | 0.9億〜1.8億円 | 指定権・稼働率が重要 |
| 物流・運送 | 2〜4倍 | 0.6億〜1.2億円 | 車両・ドライバー確保が評価 |
有利子負債がある場合、株式譲渡の対価(株主が受け取る金額)は「企業価値(EV)から純有利子負債を差し引いた株式価値」になります。たとえばEVが1億円でも、有利子負債が4,000万円あれば株式価値は6,000万円です。ただしこれは「ゼロになった」わけではなく、正当な価格算定プロセスの一部です。借金があっても、経営者が手元に残せる資金はゼロではありません。
⚠️ 注意:個人保証(経営者保証)が付いた借入がある場合、会社売却後も個人保証が残るケースがあります。「経営者保証ガイドライン」の活用で保証解除を交渉することが重要です。後述の手順セクションで詳しく解説します。

✅ 結論:借金の規模・財務状態・事業の強みによって最適な手法は異なります。まず「自社がどの手法に当てはまるか」を専門家と確認することが出発点です。
会社の株式すべてまたは過半数を買い手に譲渡する方法です。会社の資産・負債・契約関係・従業員がそのまま買い手に引き継がれます。借金があっても、収益性が高く返済見通しが立っている企業であれば株式譲渡は十分に成立します。手続きが比較的シンプルで、売り手(経営者)は株式の対価を受け取って引退できます。
ただし、買い手側は「簿外債務」などのリスクを恐れるため、デューデリジェンス(DD)が厳しくなる点は理解しておきましょう。
会社そのものでなく、特定の事業(資産・契約・従業員など)を切り出して譲渡する方法です。債務超過の企業や、一部の優良事業だけを売りたい場合に有効です。売却後、残った法人は残存する負債の処理(清算・破産など)を別途行います。
九州の中小企業では、たとえば「建設会社の土木部門だけを地元の同業他社に売り、不採算の内装部門は清算する」といった活用例があります。
民事再生手続き(裁判所主導で債務を圧縮する法的手続き)と、スポンサー企業によるM&Aを組み合わせる手法です。借金が過大で通常のM&Aでは解決しない場合に選択されます。スポンサーが再生計画を支援し、事業を継続させながら再出発するイメージです。手続き期間は6か月〜2年程度かかりますが、雇用維持・事業継続という点では最も優れた効果を発揮します。
新株を発行して外部の投資家や企業に引き受けてもらい、資金調達しながら経営権の一部を渡す方法です。完全売却ではなく「経営の一部を残したい」「まず資金を入れて再建してから売却したい」という場合に有効です。九州でも地銀系ファンドやベンチャーキャピタルがこのスキームを使うケースが増えています。
| 手法 | 向いているケース | 手続き期間 | 経営者の対価 | 負債の扱い |
|---|---|---|---|---|
| 株式譲渡 | 借金あり・黒字・収益安定 | 3〜9か月 | 株式対価(高め) | 買い手が引き継ぐ |
| 事業譲渡 | 債務超過・一部優良事業あり | 3〜6か月 | 事業対価(中程度) | 法人に残る |
| 民事再生+スポンサー | 過大債務・事業継続希望 | 6か月〜2年 | 限定的〜なし | 裁判所が圧縮 |
| 第三者割当増資 | 資金不足・段階的売却希望 | 1〜3か月 | 持分希薄化 | 増資資金で返済可 |
⚠️ 注意:「とにかく早く売りたい」という焦りから、適切な価格査定をせずに売却してしまう経営者が少なくありません。複数の仲介業者・専門家に相見積もりを取ることが非常に重要です。
✅ 目安:一般的な中小企業のM&Aは着手から成約まで6か月〜1年程度。早め・丁寧な準備が成功率を大きく左右します。
まずM&A仲介会社、公認会計士、税理士、弁護士のいずれかに相談します。借金ありの案件では法的リスクも絡むため、できればM&Aと法務・財務の両方に詳しい専門家チームが理想です。九州では以下のような相談窓口があります。
初期相談は多くの機関で無料です。まず3社以上に相談することを強くお勧めします。
専門家が財務諸表・資産・負債・収益力を分析し、売却可能な価格レンジを算定します。借金ありの企業では、以下の数値が特に重視されます。
この段階で売却手法(株式譲渡か事業譲渡かなど)も決定します。
仲介業者がノンネームシート(会社名を伏せた概要書)を作成し、買い手候補企業にアプローチします。九州エリアでは、地元同業他社・大手グループの九州拠点・東京系ファンドなどが主な買い手候補です。関心を示した候補にのみNDA(秘密保持契約)を締結したうえで詳細情報を開示します。
候補絞り込み後、条件交渉を経て基本合意書(LOI)を締結します。価格・スキーム・デューデリジェンスの範囲・独占交渉期間などが盛り込まれます。この段階では価格は「おおよその合意」であり、DDの結果で変動することがあります。
買い手側が会計・法務・ビジネスの各面から調査を実施します。借金あり企業では財務DDが特に厳しくなります。以下の書類を事前に整理しておくことが重要です。
DDの結果を踏まえた価格調整後、最終譲渡契約書(DA)を締結し、代金決済・株式移転・登記変更などを行います。経営者保証の解除交渉も並行して進め、金融機関に「経営者保証ガイドライン」に基づく保証解除を申し入れます。
⚠️ 注意:経営者保証の解除は「会社が売れたら自動的に消える」わけではありません。金融機関との個別交渉が必要です。買い手側が個人保証を引き継いでくれるケース、新しい担保提供で保証を解除するケースなど、パターンは様々です。弁護士・税理士とともに事前に戦略を立てましょう。
| フェーズ | 主な作業内容 | 目安期間 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 初期相談・選定 | 専門家選定・相談・秘密保持 | 〜1か月 | 複数社に相談 |
| バリュエーション | 企業価値算定・戦略策定 | 1〜2か月 | 財務書類の事前整理 |
| 買い手探索 | ノンネームアプローチ・NDA | 2〜4か月 | 情報管理の徹底 |
| 基本合意 | 条件交渉・LOI締結 | 4〜6か月 | 価格は暫定的 |
| デューデリジェンス | 財務・法務・ビジネスDD | 5〜8か月 | 開示資料の完備が必須 |
| 最終契約・クロージング | DA締結・代金決済・保証解除 | 8〜12か月 | 経営者保証交渉を並行 |

✅ 成功の秘訣:借金ありの会社売却で成功するケースの共通点は「早期着手」「情報の透明性」「専門家チームとの連携」の3点です。
中小企業でよく問題になるのが簿外債務(帳簿に計上されていない負債)の存在です。たとえば、従業員への未払い残業代、取引先への損害賠償リスク、連帯保証している関係会社の借入などが挙げられます。これらを隠したまま売却を進めると、DDで発覚してM&A破談になるか、成約後に損害賠償を請求されるリスクがあります。
「すべてを正直に開示したら売れなくなるのでは」と心配する経営者も多いですが、プロのM&Aアドバイザーは問題のある案件でも売却できる方法を知っています。隠すより開示し、専門家とともに対処策を考えるほうがはるかに良い結果につながります。
売却の情報が事前に漏れると、従業員の離職・取引先の取引中止など致命的な問題が発生します。特に九州の地方都市では人脈が密接なため、情報漏洩リスクが高い点に注意が必要です。
NDA(秘密保持契約)の厳格な運用はもちろん、社内での情報共有は「必要最小限の人物のみ」に絞ります。M&A成約後のクロージングと同時に従業員・取引先への適切な告知を行う段取りを事前に計画しておきましょう。
会社売却には税金が発生します。手法によって課税パターンが異なります。
借金の返済に売却代金を充当しても、税金は別途かかります。手取り額の計算では必ず税引後の金額を確認しましょう。売却前に税理士と節税策(株式の分散保有、退職金の活用など)を相談することも重要です。
2023年4月改正後の「経営者保証ガイドライン」では、M&Aによる経営者交代時に金融機関が原則として経営者保証を解除する方向で対応することが求められるようになりました。九州の地銀・信金でもこのガイドラインに準じた対応が広がっています。保証解除のためには以下の条件整備が有効です。
⚠️ 注意:M&A成約後も個人保証が残り続けるケースがあります。「保証解除の確約」をクロージング条件に盛り込む交渉を、弁護士を通じて行うことを強くお勧めします。成約してからでは交渉力が大幅に下がります。
| リスク | 影響度 | 具体的な対策 |
|---|---|---|
| 簿外債務の発覚 | 高(破談・損害賠償) | 事前に弁護士・会計士と洗い出し、開示・対処策を策定 |
| 情報漏洩による従業員離職 | 高(企業価値毀損) | NDA厳守・情報共有範囲の限定・成約後の丁寧な説明 |
| 個人保証の残存 | 高(売却後も債務者) | クロージング条件に保証解除を盛り込む・経営者保証ガイライン活用 |
| 想定外の税負担 | 中(手取り減少) | 事前に税理士と試算・節税策の実行 |
| DD後の大幅な価格引き下げ | 中(条件悪化) | 財務書類の事前整備・問題の先行開示 |
| 買い手が見つからない | 中(売却失敗) | 複数の仲介経路の活用・事業価値の磨き上げ |
✅ 選定ポイント:借金ありの案件に強い仲介会社は「法務・財務の専門家チームを持つ」「九州エリアの買い手ネットワークが豊富」「成功報酬型で初期費用が少ない」の3点を満たしていることが多いです。
まず費用をかけずに方針を固めたい方には、公的窓口の活用をお勧めします。
民間のM&A仲介・FA(ファイナンシャルアドバイザー)には、全国規模の大手から九州密着の中堅まで多数存在します。選ぶ際は以下の基準で比較しましょう。
借金ありの会社売却では、M&A仲介会社だけでなく弁護士(法務リスク・保証解除交渉)・税理士(節税・税務申告)との連携が不可欠です。九州には事業再生・M&Aを専門とする法律事務所・会計事務所が増えており、福岡市内だけでも複数の専門事務所があります。M&A仲介会社に「連携する士業の紹介」を依頼することも一つの手です。
⚠️ 注意:「M&A仲介会社が売り手・買い手の双方から手数料を取る両手仲介」は、売り手に不利な条件で成約されるリスクがあります。利益相反を避けるため、売り手専属のFA(ファイナンシャルアドバイザー)に依頼する方式も検討しましょう。

本記事の要点を整理します。
「まだ間に合うかどうか不安」という方こそ、まず一歩踏み出してください。九州各県の事業引継ぎ支援センターへの相談は完全無料です。プロの視点で現状を整理するだけで、見えていなかった選択肢が必ず見えてきます。借金を抱えたまま毎日不安を感じながら経営を続けるより、専門家と一緒に最善の出口を見つけることが、経営者自身の人生にとっても、従業員や取引先にとっても最善の選択です。