「会社を設立したいけれど、手続きが複雑そうで何から始めればいいかわからない」「費用がどれくらいかかるのか不安で、なかなか踏み出せない」——そんな悩みを抱えながら起業を検討しているビジネスパーソンは少なくありません。実際、会社設立には定款認証・登記申請・各種届出など複数のステップがあり、株式会社と合同会社では費用も手順も大きく異なります。本記事では2026年最新情報をもとに、会社設立の手続きフローから実際にかかる費用の内訳、コストを抑えるための節約術まで、経営者・起業家が知っておくべきすべてを具体的な数値とともに徹底解説します。
会社を設立する際にまず直面する選択が、「株式会社にするか、合同会社(LLC)にするか」という問題です。2026年現在、日本国内の会社設立件数のうち株式会社は全体の約70%を占め、合同会社は約28%と年々増加傾向にあります。どちらを選ぶかによって、設立費用・運営コスト・社会的信用度・税務処理の複雑さが大きく変わります。
株式会社は株主と経営者を分離できる仕組みを持ち、将来的な資金調達(株式発行・IPO)に対応できる点が最大の強みです。一方、合同会社は出資者(社員)が経営を担う「持分会社」の一形態であり、設立コストが低く、決算公告義務がないため維持コストも抑えられます。IT系スタートアップや個人事業から法人化するケースでは合同会社を選ぶ割合が高まっています。
以下の表に、株式会社と合同会社の主な違いをまとめました。自社のビジネスモデルや将来の成長計画と照らし合わせて選択することが重要です。
| 比較項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 設立登録免許税 | 資本金の0.7%(最低15万円) | 資本金の0.7%(最低6万円) |
| 定款認証費用 | 約3〜5万円(公証人手数料) | 不要(0円) |
| 設立最低費用の目安 | 約20〜25万円(電子定款の場合) | 約6〜10万円(電子定款の場合) |
| 資本金の最低額 | 1円〜(実質的には1万円以上推奨) | 1円〜(実質的には1万円以上推奨) |
| 決算公告義務 | あり(官報掲載費:約6万円/年) | なし |
| 社会的信用度 | 高い(取引先・金融機関からの信頼) | やや低い(認知度が上昇中) |
| 株式・持分の譲渡 | 比較的自由(定款による制限可) | 社員全員の同意が必要 |
| 役員任期 | 最長10年(再任登記費用が発生) | 任期の定めなし |
| IPO(上場) | 可能 | 不可(要組織変更) |
株式会社の設立手続きは、大きく分けて8つのステップで構成されます。専門家に依頼しない場合でも、各ステップの内容を理解しておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。一般的に設立申請から登記完了まで約2〜3週間かかります。
【STEP 1】会社の基本事項の決定:商号(会社名)・本店所在地・事業目的・資本金額・発起人・役員構成を決定します。商号は同一住所に同一商号の会社がないかを法務局で事前調査することが重要です。
【STEP 2】定款の作成:会社の憲法ともいえる定款を作成します。絶対的記載事項(目的・商号・本店所在地・設立に際して出資される財産の価額・発起人の氏名)をすべて記載する必要があります。
【STEP 3】定款の認証:作成した定款を公証役場で公証人に認証してもらいます。認証手数料は資本金100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、300万円以上で5万円(2026年現在)です。電子定款を利用すれば収入印紙代4万円を節約できます。
【STEP 4】出資金の払込み:発起人の個人口座に資本金を振り込みます。通帳のコピーが設立登記の証明書類となります。
【STEP 5】設立登記申請書類の作成:登記申請書・発起人決定書・就任承諾書・印鑑届出書などを作成します。
【STEP 6】法務局への登記申請:作成した書類一式を管轄の法務局に提出します。登録免許税(最低15万円)を収入印紙で納付します。
【STEP 7】登記完了の確認:申請から通常7〜10営業日で登記が完了します。登記完了後、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)を取得します。
【STEP 8】各種届出の提出:税務署・都道府県税事務所・市区町村役場・年金事務所・ハローワークへの届出を設立後速やかに行います(詳細は後述)。
合同会社の設立手続きは、株式会社と比較してシンプルで費用も抑えられるのが特徴です。最短で1〜2週間での設立が可能です。
主な流れは「①基本事項の決定 → ②定款の作成(公証人認証不要)→ ③出資金の払込み → ④登記申請書類の作成 → ⑤法務局への登記申請 → ⑥各種届出」となります。定款認証が不要な分、手続きが大幅に簡素化されます。登録免許税は資本金の0.7%(最低6万円)で、株式会社の最低15万円と比べて約9万円安く設立できます。
設立登記申請に必要な主な書類は以下の通りです。漏れがあると登記申請が却下(補正)されるため、事前に十分確認してください。
【株式会社の必要書類】:登記申請書、定款(認証済み)、発起人決定書(または創立総会議事録)、設立時取締役の就任承諾書、設立時代表取締役の就任承諾書、設立時監査役の就任承諾書(監査役設置の場合)、取締役の印鑑証明書、払込みを証する書面(通帳コピー等)、登録免許税の収入印紙を貼付した台紙、印鑑届書
【合同会社の必要書類】:登記申請書、定款(認証不要・自社作成)、代表社員・本店所在地及び資本金の額決定書、代表社員の就任承諾書、払込みを証する書面、登録免許税の収入印紙を貼付した台紙、印鑑届書
会社設立にかかる費用は、大きく「法定費用(法律で定められた公的な費用)」と「任意費用(専門家報酬・実費など)」に分けられます。まず法定費用から理解しておきましょう。
株式会社の場合、法定費用の合計は紙の定款を使う場合で約22〜24万円、電子定款を使う場合で約18〜20万円が目安です。合同会社の場合は電子定款で約6万円が最低ラインとなります。
具体的な内訳としては、株式会社の定款認証手数料(公証人手数料)が資本金300万円以上で5万円、定款謄本代が約2,000円(1枚250円×枚数)、定款への収入印紙代(紙定款の場合のみ)が4万円、登録免許税が資本金の0.7%(最低15万円)となっています。合同会社では定款認証が不要なため、法定費用は登録免許税(最低6万円)のみが主な項目となります。
法定費用以外にも、設立にあたってさまざまな費用が発生します。特に司法書士や行政書士などの専門家に依頼する場合は報酬が加算されます。
専門家報酬の相場は、司法書士への登記申請代行が5〜15万円、行政書士への定款作成が3〜8万円が一般的です。最近では「会社設立オンラインサービス」を利用すれば、専門家報酬を0〜3万円程度に抑えられるサービスも増えています。freee会社設立・マネーフォワード会社設立・弥生会社設立などのクラウドサービスは、2026年現在も無料〜数千円で定款テンプレートや書類作成支援を提供しています。
その他の実費として、会社代表者印(実印)の作製費が5,000〜3万円、登記簿謄本の取得費が600〜700円/通(設立後に複数通必要)、印鑑証明書の取得費が450〜600円/通などがかかります。また、法人銀行口座の開設手数料は多くの銀行で無料ですが、ネット銀行では一部有料(0〜3,300円程度)のケースもあります。
設立費用の総額は、会社形態・定款の種類・専門家への依頼有無によって大きく変わります。以下に代表的なパターン別の費用目安をまとめます。
| 設立パターン | 法定費用 | 専門家報酬等 | 合計目安 |
|---|---|---|---|
| 株式会社(紙定款・自分で手続き) | 約22〜24万円 | 印鑑作製等:約3万円 | 約25〜27万円 |
| 株式会社(電子定款・自分で手続き) | 約18〜20万円 | 印鑑作製等:約3万円 | 約21〜23万円 |
| 株式会社(電子定款・司法書士依頼) | 約18〜20万円 | 約8〜15万円 | 約26〜35万円 |
| 合同会社(電子定款・自分で手続き) | 約6万円 | 印鑑作製等:約2万円 | 約8〜10万円 |
| 合同会社(電子定款・司法書士依頼) | 約6万円 | 約5〜10万円 | 約11〜16万円 |
会社設立コストを削減するうえで最も効果的な方法が「電子定款」の活用です。紙の定款には収入印紙4万円の貼付が義務付けられていますが、電子定款(PDF形式で電子署名を付与した定款)には収入印紙が不要なため、4万円をそのまま節約できます。
電子定款の作成手順は以下の通りです。①Adobe Acrobat(有料版)またはPDF署名ツールを使用してPDF定款を作成。②マイナンバーカードと対応するICカードリーダーを用意して電子署名を付与(ICカードリーダーは1,000〜3,000円で購入可能)。③法務省の登記・供託オンライン申請システムから電子定款を公証役場に送信。④公証人が認証した電子定款データを受け取り、そのまま登記申請に使用。
最近ではfreee会社設立やマネーフォワード クラウド会社設立などのサービスを使えば、電子定款の作成・送信をサービス内でサポートしており、ICカードリーダーを持っていなくても代行対応(別途手数料5,000円〜)してくれるサービスもあります。
電子定款以外にも、会社設立コストを削減できるポイントが複数あります。特に資本金の設定は慎重に考える必要があります。
まず資本金の設定について。登録免許税は「資本金×0.7%」で計算され、最低税額が株式会社は15万円、合同会社は6万円です。たとえば資本金を2,142万円に設定した場合、2,142万円×0.7%=約14.99万円となり、最低税額の15万円が適用されます。逆に資本金を2,143万円以上にすると登録免許税が15万円を超えてしまうため、コスト観点では2,142万円が株式会社の「設立費用最低化」の上限ラインとなります。
次にオンライン申請の活用です。法務局の窓口に直接行かずに、登記・供託オンライン申請システムからオンライン申請することで、登録免許税が4,000円割引(2026年現在も継続中・ただし電子定款利用時)になる場合があります。また、印鑑届書もオンライン手続きに対応してきており、移動コストや時間も大幅に削減できます。
さらに会計・税務の自計化も初期コスト削減に有効です。設立直後から会計ソフト(freee・マネーフォワード等:月額2,000〜4,000円程度)を導入し、記帳作業を自社で行えば、税理士への依頼費用(記帳代行月2〜5万円)を削減できます。ただし確定申告・法人税申告は専門家に依頼する方がリスクを減らせるため、業務分担を検討しましょう。
会社設立費用そのものに充当できる補助金は少ないですが、設立後の事業展開で活用できる支援制度を把握しておくことで、実質的な初期投資を回収できます。2026年時点で活用可能な主な支援制度として、小規模事業者持続化補助金(上限50〜250万円・販路開拓費用等に活用可能)、IT導入補助金(上限150万円・会計ソフトやECシステム導入に活用可能)、創業補助金(各自治体により異なるが上限100〜300万円)などがあります。
特に各都道府県・市区町村の創業支援補助金は「会社設立費用」「事務所の賃貸費用」「広告宣伝費」などを対象にしているケースも多く、申請前に地元の商工会議所や中小企業支援センターへ相談することを強く推奨します。
会社設立後は、登記完了だけで終わりではありません。税務署・都道府県税事務所・市区町村役場への届出が設立後速やかに必要です。これらを怠ると、青色申告の特典が受けられなくなったり、消費税の免税期間を適切に管理できなくなるリスクがあります。
税務署への主な届出一覧として、法人設立届出書(設立後2か月以内)、青色申告の承認申請書(設立後3か月以内 または 第1事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで)、給与支払事務所等の開設届出書(設立後1か月以内)、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(希望する場合)、消費税課税事業者選択届出書(免税事業者でも課税事業者を選択する場合)などがあります。
特に青色申告の承認申請書は提出期限が厳格で、期限を過ぎると原則として設立初年度から青色申告の適用が受けられません。青色申告では欠損金の10年間繰越控除・特別償却・少額減価償却資産の特例(30万円未満の資産を全額損金算入)などのメリットがあるため、忘れずに提出することが重要です。
従業員を雇用する場合や、社会保険加入要件を満たす法人(法人代表者は原則加入義務あり)は、社会保険・労働保険の届出も必要です。
年金事務所への届出として、健康保険・厚生年金保険の新規適用届(設立後5日以内)、健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届、健康保険被扶養者(異動)届などがあります。労働基準監督署への届出として、労働保険関係成立届(従業員採用後10日以内)、就業規則の届出(常時10人以上の労働者を雇用する場合)などがあります。ハローワーク(公共職業安定所)への届出として、雇用保険の適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届などがあります。
これらの届出は期限が短いものも多く、設立準備段階から段取りを組んでおくことが重要です。特に法人代表者(取締役)は原則として健康保険・厚生年金保険への加入が義務となっており、毎月の社会保険料負担(報酬の約15%が会社負担)も資金計画に織り込む必要があります。
設立後の実務として、法人銀行口座の開設は最優先事項のひとつです。設立直後は履歴事項全部証明書(登記簿謄本)の取得日から2〜3週間以内に申請することが望ましく、時間が経つと「設立して間もない会社」として審査が厳しくなる銀行もあります。
口座開設にあたっては、登記簿謄本(発行から3か月以内)、代表者の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)、会社の印鑑証明書、定款の写し、事業内容がわかる書類(会社案内・ホームページURL等)が一般的に求められます。メガバンクや地方銀行では審査に1〜2週間かかることも多く、ネット銀行(GMOあおぞらネット銀行・住信SBIネット銀行等)では3〜5営業日程度と早い場合もあります。
会社設立の手続きは、時間とエネルギーさえあれば自分で行うことも十分可能です。しかし、本業の準備・事業計画の策定・資金調達など、設立前後はやることが山積みになります。「専門家に依頼するコスト」と「自分で手続きする時間コスト」を比較して判断することが重要です。
たとえば、専門家報酬を10万円として、自分で手続きをすれば10万円節約できるとします。しかし書類調査・定款作成・法務局訪問などに合計20〜30時間かかるとすれば、時給換算で3,000〜5,000円程度の仕事をしていることになります。その時間を営業活動や商品開発に使えば、より大きなリターンが期待できる場合も多いでしょう。
一般的な目安として、司法書士は登記申請代行(法人設立登記)を専門とし、報酬の相場は5〜15万円です。行政書士は定款作成・認証手続きの代行を専門とし、報酬の相場は3〜8万円です。司法書士と行政書士の両方が対応できる「ワンストップ型」の事務所やオンラインサービスを利用すれば、手続き全体を8〜20万円程度でまとめて依頼できます。
設立後の税務・労務管理を見越して、会社設立段階から税理士・社労士との顧問契約を検討することも重要です。特に税理士については、設立直後から顧問契約を締結しておくと、青色申告の届出・消費税の課税方式選択・決算期の設定など、税務戦略上重要な意思決定をサポートしてもらえます。
税理士顧問料の相場は、年商規模によって異なりますが、設立初年度の小規模法人(年商1,000万円未満)の場合、月額顧問料2〜5万円、決算申告報酬が10〜30万円程度が一般的です。社会保険労務士への依頼は、従業員を採用する場合に特に価値があり、給与計算・社会保険手続き代行で月額1〜3万円が相場です。
最近では「会社設立+税理士顧問+クラウド会計」のパッケージプランを提供している会計事務所も増えており、設立時の登記代行費用を実質無料にする代わりに月額顧問料を契約するモデルもあります。長期的なコストも含めて比較検討することが大切です。
専門家を選ぶ際には、単に費用の安さだけでなく、自社の業種・規模・将来計画に合った専門家を選ぶことが重要です。たとえばIT・スタートアップ系の起業であれば、ベンチャー企業の支援実績が豊富な税理士・司法書士を選ぶと、資金調達やストックオプション設計などの相談にも対応してもらえます。
信頼できる専門家を見つける方法として、①商工会議所・中小企業支援センターの紹介制度を利用する(初回相談無料が多い)、②顧問先の実績・専門分野を事務所のウェブサイトで確認する、③複数の事務所に見積もりを依頼して比較する、④知人経営者からの紹介を活用する、などが挙げられます。