「CFD解析の結果が実験値と大きくズレている」「メッシュを細かくしても収束しない」「解析担当者によって結果が変わる」——CFD(数値流体解析)を活用する設計・開発部門でよく聞かれる悩みだ。本記事ではCFD解析の精度が実験と合わない根本原因と、精度を改善する3つの具体的な方法を解説する。
| 原因カテゴリ | 具体的な問題 | 精度への影響 |
|---|---|---|
| メッシュの問題 | 粗すぎるメッシュ・壁面近傍の解像度不足 | 大(速度・圧力分布の誤差) |
| 乱流モデルの選択ミス | 流れのレジームに適合しないモデル使用 | 大(特に境界層・剥離流れで顕著) |
| 境界条件の設定ミス | 実験と異なる入口流速・圧力条件 | 大(解析全体がズレる) |
| 物性値の誤り | 温度依存の粘度・熱伝導率を固定値で設定 | 中(特に高温・低温環境で顕著) |
| 形状の簡略化過多 | 細部形状の省略が流れに影響 | 中〜大(複雑流れ場で顕著) |
CFD精度向上の基本はメッシュ独立性検証(Mesh Independence Study)だ。メッシュを段階的に細かくしながら、注目する物理量(圧力損失・熱流束等)が変化しなくなるメッシュ密度を特定する。
壁面近傍ではy+値を適切な範囲に設定することが特に重要だ。使用する乱流モデルによって推奨y+が異なり(標準k-εならy+30〜300、SSTならy+1程度)、この設定ミスが大きな誤差の原因になることが多い。
乱流モデルは「万能」ではなく、流れ場の特性に合わせた選択が必要だ。剥離・再付着を伴う流れにはSST k-ω・境界層の安定した流れには標準k-εが一般的な選択基準だ。LESやDNSは精度は高いが計算コストが大幅に増大するため、実務では適切なRANSモデルの選択が優先される。
解析と実験のズレを「どこで・どの程度・どの方向にズレているか」を系統的に記録・分析する。ズレのパターンを特定することで境界条件ミス・モデル選択ミス・実験の計測誤差などの原因を切り分けられる。解析担当者間でこのデータを共有することで、組織としての解析精度が向上する。
CFD解析の精度問題はメッシュの適切な設計・流れ場に合った乱流モデルの選択・実験条件との厳密な境界条件一致という3点を順番に確認することで大幅に改善できる。まず境界条件の再確認から始めよう。